人は、「慣れないこと」を始めた当初は、「必要以上の力」を込めてしまうものです。
そして、「必要以上の力」を込めてしまうが故に、とても疲れてしまいがちです。
例えば、ゴルフやテニスなどのスポーツをやり始めた初心者は、上級者に比べて「必要以上の力」を込めてしまいます。
その結果、上級者にはできないようなところに「マメ」ができたり、上級者が痛めないような身体の部位を痛めたりしてしまいます。あるいは、同じ分量の練習をしても、上級者が涼しい顔でこなしている横で、初心者がゼエゼエと息を切らして疲れ果てているということもあります。
仕事においても同様で、新入社員は「必要以上の力」を込めてしまいがちです。新入社員が長い時間をかけて「10」の仕事をこなす間に、ベテラン社員は短い時間で「50」の仕事をこなしたりします。
要するに、初心者と上級者の違いは、「力の抜きどころ」の「数」と「程度」だろうと思います。
初心者の方は「力の抜きどころ」の数が少なく、また程度も低い傾向にあり、逆に上級者は「力の抜きどころ」の数も多く、またその程度も高いと言えます。
「力の抜きどころ」の数と程度が高いからこそ、上級者は「必要以上の力」を込めてしまうこともなく、疲れ果ててしまうことも少なくなるのです。
「新型コロナウィルス対策」という観点で言えば、日本人、いや世界中の人々は皆「初心者」であると言えます。
初心者であるが故に、「必要以上の力」を込めてしまい、「力の抜きどころ」の数や程度が低いのかもしれません。そして、疲れ果ててしまっている。
しかし、もう半年近く、私達はこのウィルスと向き合い、様々な対策を実践してきました。
そろそろ、「どこら辺で力を抜くことができるのか」ということを考え始めても良さそうな気がします。
ウィルスの感染を防ぐために必要なことは「自分の口、鼻、目からウィルスを侵入させないこと」です。
ところが、我々が実践しているウィルス対策の中に、このことに直結しないことも多々あるのではないでしょうか。
例えば、2人の人間がいて、お互いマスクをつけているのならば、肩と肩が触れあうくらいの距離にいたとしても、そのことがすぐさま「感染リスク大」とは言えません。
満員電車の中ですら、「大声で話す」ということをしている人は少ないでしょうから、仮に感染者がいたとしても、ただそばに立っていたというだけで感染が広がるリスクは低いように感じられます。
ソーシャルディスタンスと言って2メートルの距離を空ける、というのも、マスクをしている人同士ならばそれほど神経質にならなくても良さそうです。
気にしなくてはならないのは、「マスクをしていない人同士」が「近い距離で向かい合って話す」という場面です。これは感染のリスクが高いと言えます。
部屋の換気についても、やり過ぎていないか見直せるところだと思います。「密閉された空間に大勢の人がいて、みんなが大声を出している」というのであれば、窓やドアを全開にするような換気でも足りないくらいかもしれませんが、「部屋の大きさに対して、人の数はそれほど多くない」とか「部屋の中で大声を出している人はほとんどいない」ということであれば、換気扇だけはつけておいたとしても、窓やドアを閉めて「冷房」を効かせても良いのではないかと思います。
「どこまでのことが本当に必要で、どこまでのことが必要ないのか」ということを考えながら生活をしていかないと、いつまでも「力の抜きどころ」が見えてこないのではないでしょうか。
どんなことであっても、上級者への道のりを短くするためには、「力の抜きどころ」を探すということが大事なのだろうと思います。
<おしまい>