<前回の続き>

前回、「自動詞と他動詞」について、学校や文法書の説明の仕方がおかしいのではないかということを書きました。

よく見かけるのは、

『目的語を必要とする動詞が他動詞で、目的語を必要としない動詞が自動詞だよ。』

という説明です。

「必要か否か」という観点で、自動詞と他動詞を区別しようとするものです。

しかし、これでは後々混乱が生じる可能性があります。

なぜなら、上記の説明では、「日本語における自動詞と他動詞の区別」と「英語における自動詞と他動詞の区別」については述べきれていないからです。

例えば、「閉める」という動詞。

これは日本語ですが、国語辞典を開けると、きちんと「閉める」という動詞が「自動詞なのか他動詞なのか」が記載されています。

皆さんご存じの通り、「閉める」は他動詞です。

そして、「閉める」を少し変化させた「閉まる」を辞書で調べると、今度は「自動詞」と載っています。

「閉める」と「閉まる」。

辞書にそれぞれ「他動詞」とか「自動詞」とか書かれているのですが、この違いは一体なんでしょうか?

上記の説明に当てはめて考えてみましょう。

『目的語を必要とする動詞が他動詞で、目的語を必要としない動詞が自動詞だよ。』

ふむ。。。

「目的語を必要とする動詞=他動詞」ということですので、「閉める」という動詞は「目的語を必要とする」ということになりますね。

あらら、ここで疑問に思うのは、「そもそも、目的語って何だろう?」ということです。

国語辞典で今度は「目的語」を調べてみると、次のようにあります。

---------------—
■目的語
文の成分の1つ。述語となる動詞の動作・作用が及ぶ人や事物を表す語。客語。
「顔を洗う」の「顔を」、「生徒をしかる」の「生徒を」などのように、現代語では多く格助詞「を」を伴う。
(「明鏡国語辞典」より)
---------------—

なるほど、そういうのが目的語か。。。

と理解できた人はとっても賢い!

「動作・作用が及ぶ人や事物」という言い方は、確かにその通りですが、もう少し分かり易い説明はないのでしょうか。

「顔を洗う」の「顔」が目的語。

「生徒をしかる」の「生徒」が目的語。

言い換えると、「顔」は「洗われるもの」であり、「生徒」は「しかられるもの」です。

「動作を行うもの」と「動作が行われるもの」というように考えると、「目的語」というものが見えやすくなります。

「動作を行うもの(やる側)=主語」
「動作が行われるもの(やられる側)=目的語」

このように区別しておくと分かり易いのではないでしょうか。

さて、話を戻しますが、「閉める」という言葉が「他動詞」なのは、「目的語を必要とする」からなのでしょうか?

例えば、こんな文があったらどうでしょう?

「早く閉めなさい!」

この文には「目的語」に当たる言葉はありません。

もちろん、この文が発せられる状況を想像すれば、「そのドアを」とか「そのふたを」とか、何かしらの目的語を指しているものと考えられますね。

でも、実際には目的語がなくても「文として成立」しています。

目的語がなくても文が成立するのだとしたら、「目的語を必要とする」という言い方では誤解が生じないでしょうか?

「必要」ということは、「必ず要る」ということです。

もちろん、上記のような文では「目的語は省略されている」という解釈になるでしょう。

でも、「場合によっては省略しても良い」ということならば、それは「必要だ」ということにはなりません。

揚げ足を取っているように思われるかもしれませんが、この辺りをあやふやにしてしまうと、「他動詞とは何か?」という定義がぐらついてしまいます。

「必要」という言葉を使うからややこしくなるのです。

では、どうすれば良いか。

「必要」という言葉ではなく、「可能」という言葉を使えば良いのです。

「可能か不可能か」という観点で見ていくと、自動詞と他動詞について以下のように説明することができます。

『目的語をつけて言うことが「可能」な動詞が他動詞で、目的語をつけて言うことが「不可能」な動詞が自動詞だよ。』

これならば、「閉める」という動詞がどうして他動詞なのか、説明がつきます。

「早く閉めなさい!」

という文の「閉めなさい」は「閉める」が変化したもの。

この場合には、「目的語」に当たる言葉がありません。

ですが、この文の中に目的語をつけることは「可能」と言えます。

「目的語をつけることが可能」だから、「閉める」という動詞は「他動詞」である、といえるのです。

一方、「閉まる」はどうでしょう?

これは、どうやっても「目的語」をつけて表現することが不可能です。

「そのドアを閉まる」とか「そのふたを閉まる」などと言うことはできません。

つまり、「目的語をつけることが不可能」なのですから、これは「自動詞」ということになるのです。

「必要か不必要か」という観点ではなく、「可能か不可能か」という観点で見ていくと、「他動詞」と「自動詞」の区別は簡単になります。

ただし、これは「日本語」での話です。

英語での「自動詞と他動詞の区別」は、目的語をつけることが「可能か不可能か」という観点では見分けることができません。

この「日本語と英語の違い」をハッキリさせない限り、日本の英語学習者たちに安眠できる日はやってこないかもしれません(笑)

さて、長くなったので、今日はこのへんで。

次回は「英語における自動詞と他動詞の区別」についてご紹介しますね。

どうぞお楽しみに!

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