さあ、ちょっと間が空きましたが、今日も「ここが変だよ学校英語」のテーマ、行ってみましょう!

本当は、「自動詞と他動詞」の話の続きをやろうかと思ったのですが、なんだか長くなってきたし、読者にも飽きられてしまいそうなので、無理矢理別のテーマに行きます!

今日は、ちまたでよく聞く「前置詞句」っていうやつについて考えてみます。

え? ちまたでよく聞くことはないって?

まあまあ。

「前置詞句」という言葉に対し、私はものすごい「嫌悪感」というか、「気に入らない感」というか、とにかく受け入れがたいものを感じます。

どうしてかというと、世の文法書や学校の先生、あるいは塾の英語教師たちまでも、かなりの確率で「前置詞句」というものを次のように説明しているからです。

『前置詞句というのは、「前置詞+名詞」の形になっているものです。』

この説明は、ネット上でも当たり前のように使われています。

例えば、「in the room」とか「for my mother」とか、こういう語群のことを前置詞句って言うのですって。

ですが、こんないい加減な説明を信じてはいけません。

「前置詞句」という言葉の構成を考えると、「前置詞+句」ということになりますね。

「前置詞」というのは「品詞」の1つです。

「品詞」は、大まかに分類すれば、以下の8つとなります。

1. 名詞
2. 代名詞
3. 動詞
4. 形容詞
5. 副詞
6. 前置詞
7. 接続詞
8. 間投詞

このような「品詞」がある中で、後ろに「句」とつけて表現されるものには、主に次の3つがあります。

「名詞句」
「形容詞句」
「副詞句」

「句」というのは「語・句・節・文」という分類の中の1つです。

「語」というのは、1つの言葉のことで、「単語」とも言われます。

「句」というのは、「2つ以上の語」が合わさったもので、それ全体が「1つ」として機能するもののことです。

そう考えていくと、例えば、「名詞句」というのは、「単語の数は2つ以上ありながらも、その語群全体で1つの名詞として機能するもの」というように説明することができます。

例えば、「to eat fish」という語群が「魚を食べること」という意味で使われていたとします。

すると、「to」「eat」「fish」とバラバラに読む時にはそれぞれ品詞が異なりますが、「to eat fish」という語群全体で1つの働きになった時に、それが「名詞」として機能しているならば、この語群は全体が1つの「名詞句」である、というように解釈することができるのです。

他にも、「形容詞句」というのは、「2つ以上の単語が集まって、1つの形容詞として機能しているもの」と説明できます。

同様に「副詞句」も、「2つ以上の単語が集まって、1つの副詞として機能しているもの」のことです。

そうやって考えると、「2つ以上の単語が集まって、1つの前置詞として機能しているもの」のことを「前置詞句」というのではないでしょうか?

例えば、「in front of」や「because of」や「by way of」や「in the middle of」などです。

「in front of」ならば、「in front of the room」というように使われます。

「in the room」の「in」は前置詞ですが、その「in」に当たる部分が「2つ以上の語」で表現されたもの、それが本当の意味での「前置詞句」というもののはずです。

ところが、ちまたでよく聞く説明では、

「in the room」というもの自体が前置詞句である、という解釈をしています。

それは変でしょう?

「in the room」のような語群のことを、「前置詞が作る句」とか「前置詞が導く句」と言うのならば理解できますし、納得がいきます。

しかし、「前置詞そのものの働きとなる句」ではなく、「前置詞+名詞」の全体を指して「前置詞句」とするのは筋が通っていません。

「in the room」を「前置詞句」と説明している人は、どのように「名詞句」や「形容詞句」や「副詞句」と区別して説明するのでしょうか?

そこに数学的思考や論理的思考はとうてい見いだせません。

理屈に強い学生、筋を通したがる学生からすれば、「どうしてそうなるの?」と混乱に陥る原因となるでしょう。

こんな説明を当たり前だと思っている英語教師は、筋を通したがる学生から「一貫性がない」と言われても仕方がないと言えます。

「みそラーメン」は「ラーメン」の一種。

「塩ラーメン」も「ラーメン」の一種。

なのに、

「とんこつラーメン」は定食の名前。

だなんて説明を聞いたら、誰だって「え? それは変でしょ?」と思うはずです。

「とんこつラーメン」だって、「ラーメン」の一種じゃないですか。

これと同じように、

「名詞句」は、「2語以上で1つの名詞になった句」のこと。

「形容詞句」は、「2語以上で1つの形容詞となった句」のこと。

「副詞句」は、「2語以上で1つの副詞となった句」のこと。

なのだとしたら、

「前置詞句」は、「2語以上で1つの前置詞となった句」のこと。

と説明するのが筋です。

これを、

「前置詞句」は、「前置詞+名詞のかたまりの句」のこと。

と説明してしまうと、「それは変でしょ?」と思いませんか?

もう、「前置詞句=前置詞+名詞」という説明を使ったり、あるいはそういう説明を信用したりするのはやめましょう。

「前置詞句」は、「2語以上で1つの前置詞となった句」のことで、例えば、「in front of」などのことです、というように説明しましょう。

そして、無責任な教師や文法書の説明によって「前置詞句」という言葉の理解に苦しみ、混乱してしまった学生諸君は、混乱した自分の方が正常なのだ、ということをここではっきり自覚しておきましょう。

一方、英語教師が、「前置詞句」という言葉について「他の参考書もみんな同じように説明しているから自分もそのように説明する」というだけの理由で上記のように説明してしまっているのだとしたら、それは何も考えていない、無責任な教師であるという自覚を持つべきです。

英語を教えるということは「言葉」を教えるということ。

そこには理屈があって、理論があって、理由があります。

そういうことを考えようとしない人には、「言葉」を教える資格などありません。

そういう中途半端な態度で英語を教えていれば、生徒を混乱させてしまうか、悪ければ、生徒を英語嫌いにしてしまいます。

「前置詞句」という言葉を使うのは悪くはない。

だけど、「前置詞句とは何か?」を説明するのならば、「名詞句」や