先日、「とんでもない」という言葉を「とんでもありません」とか「とんでもございません」と表現すると、それは「誤用」になるんですって、という話を書きました。(記事はこちら。)
外国語を人に教える立場にいると、母国語についても正しく使おうと心懸けるべきだと思うのですが、これがなかなか難しい。
「とんでもありません」や「とんでもございません」以外に、日常的に私達が使っている言葉で、実は「誤用」だった、というものがいくつもありますね。
そういうのをまとめた本すら売っているくらいです。
今日は、もう1つ、私自身もよく使ってしまう表現で、でも「誤用」であると言われているものをご紹介します。
それは「ご利用頂けます」とか「ご覧頂けます」のような表現です。
「当店では、クレジットカードをご利用頂けます。」
「サンプルは無料でご覧頂けます。」
「以下の3つからお選び頂けます。」
などのように、「ご(お)~頂けます」という表現がありますね。
「頂く」は「もらう」という言葉の謙譲語(けんじょうご)なので、「こちらが(私が)」という意味ですね。
「私が頂く」とか「私がもらう」ということです。
謙譲語ということは、自分を主語にすることはできますが、相手を主語にして「あなたが頂く」とは決して言えません。
さらに「頂く」が「頂ける」となれば「可能」の意味合いが入ってきます。
「頂ける=頂くことができる」ということですね。
これもやっぱり主語は「こちら(私)」ということになります。
「私が頂ける」とか「私が頂くことができる」ということですね。
では、「ご利用頂けます」とは、どのような表現なのしょうか。
「ご利用頂けます(誤用)」の表現の真意は、「私がご利用頂くことができる」ということではなく、「あなたが利用することができる」ということではないでしょうか。
「あなたは、当店では、クレジットカードを利用することができます。」ということを丁寧に表現しようとして、最後を「ご利用頂けます」と言い換えている、と解釈できます。
つまり、「相手(あなた)」を主語にしていたはずの内容のことを、「頂けます」というような「こちら(私)」を主語にした述語で文を終えている、というところが「誤用」になってしまう理由なのですね。
う~ん、でも、「ご利用頂けます」とか「ご覧頂けます」って言ってしまいそうです。
では、正しい言い方はどうなるのでしょうか?
いろいろとネットとかでも調べてみましたが、
「ご利用になれます」
「ご覧になれます」
「お選びになれます」
という表現が正しい、ということらしいです。
これならば、「相手(あなた)」を主語にして、「ご利用になる+できる」というような表現となりますので、誤用ではなくなります。
…でもなぁ。
「ご利用になれます」や「ご覧になれます」はまあ良いとして、「お選びになれます」はなんか変な気がしてしまうのですよねぇ。
「以下の3つからお選びになれます。」
う~ん、いいのか。。。
まあ、とにかく「ご○○頂けます」や「お○○頂けます」という表現、使わないように気をつけようと思います。
英語も難しいけど、日本語も難しいです。