前回、「音を出すことに意識を向ける」よりも「自分の音を聴くことに意識を向ける」ということの方が大事だ、と書きました。

それが簡単にできれば良いのですが、どうしても「自分の音を聴くこと」よりも、「音を出すこと」に意識が向いてしまうという人はかなりいます。

そういう人達には、たいてい頭の中の処理を「ゆっくり」にすることができない、という共通点があるように思われます。

「音を出す」と「自分の音を聴く」という、2つの異なることを同時にこなすためには、「頭の中」で「自分自身をコントロールする」ということをしなくてはなりません。

「自分自身をコントロール」するためには、頭の中の処理スピードを「ゆっくり」にした方が良いといえます。

 

例えば、空中に、「右手で三角形」を描きながら、同時に「左手で四角形」を描く、ということをしようとしたとします。

同時にスタートし、右手で三角形を4回描きながら、同時に左手で四角形を3回を描けば、同時に終わる、という感じです。

このようなことを「猛スピードでやろう」と思っても、なかなかできるものではありません。

2つのことを同時に行い、自分自身をコントロールしようとするならば、「速くやろう」ではなく、むしろ「ゆっくりやろう」とした方が良いといえます。

ところが、基本的な「性格」なのか、どうしても「ゆっくり」とすることが苦手だという人もいます。

本人にそのつもりがなくても、「自分の処理が追い付かないほどの速いスピード」でやろうとする人がいるのです。

はたで見ている私が、「もう少しゆっくりやりましょう」と言って、本人は「はい」と答えるのですが、すぐにまた「元のスピード(つまり、速いスピード)」で練習を続けてしまうのです。

発音の練習をするのに、「自分のスピードをわざと落とすことができる」ということはとても重要なことです。

慌てず、ゆっくり、丁寧に自分をコントロールしようと努めることが、発音の上達には欠かせないのだと思います。

<続く>