ずいぶん間があいてしまいましたが、久々に「英語の勉強法について考えよう」のテーマで書こうと思います。

私(久末)は、職業柄、よく人に「辞書は電子辞書と紙の辞書のどっちを使った方が良いの?」という質問を受けます。

12~13年前にはあまり普及していなかった電子辞書ですが、だいぶ進化が進んで価格帯も下がり、今では多くの人が使ってることと思います。

最近では、わざわざ電子辞書を買わなくても、携帯やスマホに入っている辞書で済ませることもできます。

電子辞書の良いところは、いくつかありますが、紙の辞書に比べて優れているという観点で見ると、

「1.カンタンに単語を引くことが出来る」という点と、
「2.画面を大きくすることができて見やすい」という点

の2つが挙げられます。

「1.カンタンに単語を引くことが出来る」というのは、調べたい単語のスペルを「途中」まで入力すれば、あとは勝手に候補を絞り込んでくれるので、そこから探せば良いということです。

従って、単語を調べるまでのスピードは、「英語初学者」にとっては、圧倒的に電子辞書の方が早いでしょう。

また「2.画面を大きくすることができて見やすい」という点に関しては、紙の辞書では対抗できない、電子辞書の最大利点の一つです。

英語を学習しようと思っても、たとえば、ある程度以上の年齢になると、小さい文字が見えにくいなどの問題が出てきます。

紙の辞書の場合は、印刷された小さい小さい文字がびっしりと書かれているため、ルーペなどの道具を併用しないと使えないという不便さがあります。

その点、電子辞書は、ものにもよりますが、使用者の都合に合わせて、ある程度は文字サイズを大きくしたり小さくしたり、自在に変更することができます。

では、「紙の辞書よりも電子辞書の方が良いか?」と結論づけることができるかと言えば、そうではありません。

物事全て、一長一短があります。

電子辞書の利点の「1」で挙げた「カンタンに単語を引くことが出来る」というのは、「英語を覚えていく」という観点から言えば、効果が弱くなってしまうとも言えます。

人は、「繰り返したもの」は身についていきますが、「繰り返さないもの」は身についていきません。

電子辞書の場合は、1つの単語を調べるのに、その単語のスペルを頭の中で「繰り返す」ということをしないで済んでしまいます。

ところが、紙の辞書の場合、辞書を引きながら、その単語のスペルを何度も頭の中で「繰り返し読み上げる」ということを行います。

しかも、「a~z」までのアルファベットの「並び順」を意識していないと、辞書というものは引けません。

この「a~z」の並び順を意識するということによって、自分が調べたい単語が、「辞書全体の中のどの辺りにあるのか」ということが、ぼんやりと、あるいは無意識に、頭の中に残ります。

例えば、「recognize」という単語は、私はある理由によって、辞書を購入する際に必ず引いて確認するようにしているのですが、私にとってこの単語は、辞書全体の「この辺にある」という感覚がすっかり身についています。

だから、私が「recognize」という語を辞書で引くのにかかる時間は、英語初学者が電子辞書を引くよりも、ずっと早いと言えるでしょう。

時間にして、およそ2~3秒でしょうか。もう少し短いかな?

英単語を覚えていく際には、単に「意味」だけで覚えるのではなく、その「スペル」と一緒に覚える必要があります。

紙の辞書の場合は、「a~z」の全体の位置関係と結びつけながら単語を引くことになるので、結果、後々までその単語が自分の中で「残りやすい」ということになります。

ところが、電子辞書はそれをしないで済むがために、後々まで自分の中に、「単語のスペルが残らない」という欠点があるのです。

このことは、携帯電話の普及によって、友達の電話番号を覚えなくなったというのと同じことです。

携帯電話の電話帳に記録されている「友人の名前」さえ見つかれば、あとは、電話番号なんて見ることすらありません。

昔は、携帯電話なんてなかった頃は、よくかける友人の家の電話番号などは記憶していたものです。

ところが、今では、よくかける友人の電話番号など覚えてもいません。

カーナビも同じです。

昔は、紙の地図を使って、なんとか実物の道と照らし合わせながら、自力で目的地まで辿り着いたものです。

だから昔の方がよく「道をおぼえる」ということができました。

ところがカーナビの登場で、「自分で道を覚える」なんてことはしなくても、勝手に目的地まで連れて行ってくれるのです。

携帯もカーナビも、いざなくなったら困るのは自分です。

昔の人の方が、いざ緊急時に公衆電話から友人に電話しなくてはならなくなったとしても、何も慌てないで済んだのです。

テクノロジーの進化によって便利な生活を送れるようになったのは良いのですが、人間が本来持っていた「能力」がどんどん退化しているかもしれないという一面も忘れてはいけません。

長くなったので、続きはまた次回に。

<続く>