<前回の続き>
前回、「文字付き音声テキスト」の利点として以下の4つを挙げました。
1.自分の意のままに、何度でも繰り返しインプットすることができる。
2.インプットの際、音だけでなく「音+文字」なので、認識がしやすい。
3.アウトプットの際、「正確」な音を出すことができる。
4.アウトプットを「大量」に行うことができる。
このうち、前回は「1」について書きました。
今回は「2.インプットの際、音だけでなく「音+文字」なので、認識がしやすい。」について考えてみましょう。
まず、「音」というのは、空気を伝う振動です。
この空気の振動を耳の中の鼓膜が捉えて、それを頭の中で「電気信号」に変えて脳へと伝えていきます。
ここで重要なのは、「音」というものは、「三次元」あるいは「四次元」のものである、ということです。
三次元というのは、分かり易く言えば、「幅」「奥行き」「高さ」の3つから表されるもの、つまり「立体」のことです。
これに「時間」という概念を加えると四次元になります。
音は、空気を伝わる「波」ですから、「幅」「奥行き」「高さ」の3つがあり、さらに「時間」によって変化していきます。
通常、次元が増えるにつれて、人間にとって認識することが困難になっていきます。
逆に、次元が下がるにつれて、人間にとって認識することは容易となっていきます。
三次元から一つ次元を下げると「二次元」になります。
これは、「平面」の世界です。
「立体」を「立体」のまま捉えたり、「立体」を再現することは、
「平面」を「平面」のまま捉えたり、「平面」を再現することに比べ、
格段に難しいのです。
例えば、平面に書かれた「絵」などを、別の平面に書き写すことは比較的容易ですが、
立体的な物体を、粘土細工のようなもので同じように作り上げることは容易ではありません。
ですが、立体的な物体も、写真などで撮影し、一度「二次元」にしたものを、平面に書き写すならば、立体を作り上げるよりも簡単です。
このように「三次元」のものを「三次元」のまま捉えるよりも、「三次元」のものを「二次元」に落としてから捉える方が、人間には容易となるのです。
ここで、英語の音声学習における「文字付き音声テキスト」の話に戻りましょう。
「文字付き音声テキスト」の場合、「音(三次元or四次元)」に加え、「文字(二次元)」という媒体もついています。
つまり、「音」のみを「三次元」として捉えていくよりも、これに併せて「二次元」の「文字」を使って捉えていく方が、確実に認識することができるのです。
かつて、私がアメリカで生活していたころ、何度も考えたことがあります。
「あ~あ、目の前で相手が言った言葉が、文字として空中に浮かんでくれればいいのになぁ…。」
「会話」のスタイルでは、目の前の相手が発話した「音」は、「音」として流れ去ってしまいます。
特に学習初期の人にとっては、ほとんど何も捉えられずに、ただ呆然としてしまいます。
ところが、「音」だけでは捉えられないことも、「音+文字」となれば、ほぼ確実に捉えることができます。
それは「次元」のより低い「文字」という媒体が、「音」を捉える助力となってくれるからです。
そうやって、「音+文字」を使って、より高い認識力で「音」を捉えていくと、学習効果としては無駄が少なく、効率的に音を吸収していくことができるのです。
さて、次回は「3.アウトプットの際、「正確」な音を出すことができる。」について考えてみましょう。
<続く>