前回の続き>

このシリーズもずいぶん長くなってしまいました。(計画的に書き始めないとこうなるという悪い見本のようです。。。)

そろそろ話について来られなくなってきた人もいるかもしれませんので、ちょっと、ここまでの話を整理しましょう。

1) そもそもの話は、英語は「勉強」ではなく「トレーニング」だ、という主張から始まった(→詳細はこちら)。

2) トレーニングには「1. 発音と文字に関する理解と知識」「2. 正しく発音するためのトレーニング」「3. 文法に関する理解と知識」「4. 単語やイディオムに関する知識」の4つに分かれる(→詳細はこちら)。

3) 「発音と文字」については、たくさんの「量」がまず必要で、さらに「発音記号」を勉強すると良いですよ(→詳細はこちら)。

4.)「文法」を学ぶには「具体化する」と「抽象化する」ということを意識すると良いですよ(→詳細はこちら)。

以上がここまでの話。

で、前回は「英文法」を学ぶ上で「文法用語」を覚えていくことは大事です!というところで終わりました。

今日はその続きにはいります。

「文法用語」というものは、これから英語を勉強する初学者にとっては、難しくてとっつきにくいものかもしれません。

しかし、「文法用語」を学ぶことによって、「イメージを分ける」「他と区別する」ということが可能となります。

例えば、次の例文を見てください。

1. He tried hard to pass the test.

2. It was hard for him to pass the test.

3. He could hardly study for the test.

この3つの英文の意味はお分かりでしょうか?

途中、「hard」や「hardly」という言葉が出てきています。

3では「hardly」という「-ly」という形で終わっているので、上の2つの「hard」とは違うことが分かるかと思います。

では、1と2では、同じ「hard」ですが、この2つは同じ意味でしょうか?

じつは、この2つは「品詞」が異なります。

1の「hard」は「副詞」で、2の「hard」は「形容詞」です。

辞書で「hard」を調べたとき、「副詞」と「形容詞」では意味が異なります。

では「hardly」は何かと言うと、これも「副詞」となるのです。

「hard」と「hardly」はどちらも「副詞」なのに、「hard」には「形容詞」の働きもあるのです。

英語初学者が、もしも「形容詞」や「副詞」という言葉を知らずに、「英文のパターン」だけを見比べて意味の違いを知ろうとしたら、とてつもない量の例文に触れていく必要があります。

しかし「形容詞とはこういうもの、副詞とはこういうもの」というように、「形容詞」や「副詞」といった文法用語を使って学習しておけば、辞書を引いた時に困惑しないですみます。

困惑しないだけでなく、何よりも意味の違いを理解するのに、だんぜん「時間が短くて済む」のです。

「英語は英語のままで覚えるべき」とか「英語は文法用語を使わないで身につけべき」ということを主張する人は、文法用語に代わる「時間」や「量」を費やさなくてはならない、ということを見落としている可能性があります。

「文法用語」として、「形容詞」や「副詞」という言葉を知ると、「形容詞」という言葉から得られる「イメージ」と、「副詞」という言葉から得られる「イメージ」との間に、明確な「境界線」が引かれます。

そもそも、「ものの名前」というものには「境界線を引いて他者と区別する」という効果があるのです。

大勢の中から「区別」するには、その区別したいものに「名前」をつけるのが効果的です。

逆に、名前をつけずに大勢の中から区別しようとするのは至難の業です。時間もかかるし、労力もかかります。

例えば、電車に乗って、知らない人ばかりがそこにいたとします。

その中から、1人だけ区別して認識できる人がいたとしたら、それは「名前を知っている人」ということになります。

そう言うと「いや、名前は知らないけど、いつも同じ電車に乗っている人だから分かる」という反論も返ってきそうです。

しかし、もしも「他者と区別する」ことができているのだとしたら、あなたは自分の中では、その人に「いつも同じ電車で会うあの人」という「名前」をつけて区別しているはずなのです。

つまり、「名前」があるからこそ「他者との区別」をつけることができるのです。

さて、文法用語というのは「名前」なのですから、その用語を覚えることで、「他との区別」がしやすくなると言えます。

さらに言えば、「辞書」を引く際にも文法用語は役に立ちます。

例えば、「形容詞」という品詞には「限定用法」と「叙述(じょじゅつ)用法」の2つの用法があります。

「限定」はともかく「叙述」という言葉は日常的にまず使われません。

ところが、辞書によっては、まさにこの「叙述」という言葉を使って説明を書いている場合があるのです。

「asleep」という形容詞を辞書で引くと、ジーニアス英和辞典(第4版・大修館)では「叙述」という言葉が使われており、さらに「限定用法ではsleepingを用いる」という説明が書かれています。

辞書を引く際、「文法用語」を知っていれば一発で理解できるのに、文法用語を知らないでいると、辞書を引いても「違いを知る」まで相当な時間がかかり、返って苦労してしまう、ということがあり得るのです。

文法用語は、学習初期の段階こそ役に立ちます。

そのうち、「実際の英語」に触れていく機会が増えていくにつれて、「文法用語」が頭に残るというよりは、「文法用語によって得られるイメージ」が頭に残っていきます。

そういうレベルに到達すれば、「文法用語を使って英語を話す」のではなく、「文法項目のイメージを使って英語を話す」ようになるのです。

こうなれば、もはや「文法用語はいらない」と言っても良いです。

ですが、そこに到達する前、特に学習初期の時には、「文法用語」を使って文法を学習していく方が良いでしょう。

これから英語を学ぼうとする人は、是非、文法用語から逃げようとしないで、むしろ積極的に自分の中に取り入れていく努力をしてみてください。

きっと、その方が早く英語を身につけられますよ。

続く

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