前回は「完成度」に関する話を書きました。

自分がかかえている全ての仕事を、「100%の完成度」で仕上げなくてはならない、などということは通常ありません。

もちろん、仕事の内容によっては、「常に100%の完成度が求められている」というものもあります。

人の命に関わることや、二度と取り返しのつかないようなことは、常に「100%の完成度」が求められて然るべきです。

ですが、「100%でなくても良い」という仕事が必ず誰にもあるはずです。

そういう「100%でなくても良い」という仕事を見つけ、ぎりぎりの完成度を見極めていきましょう、ということを前回書きました。

今回は、「完成度」という観点ではなく、「力の入れ具合」という観点で考えてみましょう。

仮に、ある仕事に関して「100%の完成度」を目指したとします。

その時、自分の「力」の入れ具合についても、「100%」の全力投球である必要があるでしょうか?

もちろん、「100%の力」を出さなければ、「100%の完成度」とならない、ということもあるでしょう。

ですが、いくら「100%の力」を出しても「100%の完成度」とならないこともあるように、「100%の力」を出さなくても「100%の完成度」となることだってあるはずです。

では、「100%の力」を出さずに、「100%の完成度」にするには、どうすれば良いでしょうか?

時間を使うのがうまい人は、仮に「100%の完成度」を目指す場合でも、「100%の力」を出さなくても良いように、きちんと適切な「手の抜きどころ」を見つけているようです。

「手の抜きどころ」さえ適切に見つけることができれば、求める完成度を維持したまま、自分は「100%の力」を出す必要がなくなります。

例えば、このことを「車の運転」に当てはめてみましょう。

車を運転する際は、「安全確認」というものが必要となります。

「安全確認」は、常に「100%」が求められます。

「90%の確認」では、確認しなかった「10%」のせいで大事故につながることもあるからです。

このため「100%の確認」が求められるのですが、だからと言って、運転手が常に、全ての安全確認に「100%の力」を使う必要はありません。

「安全確認」は、「安全確認」をしなくてはならない時だけ、「100%」の完成度でやれば良いのです。

「安全確認」が特に必要となるのは、「発進する」「減速する」「止まる」「曲がる」「車線を変更する」というように、「何かしらの変化」を起こそうとする時です。

それ以外の時は、最低限の注意を払っていれば、特に安全確認のために「100%の力」を注ぐ必要はありません。

「交差点もなく、横から何かが飛び出してきそうな死角もないような、まっすぐで広い一本道」において一定の速度で走行している場合は、必要以上に「左右の確認」を行う必要はありません。

逆に、そういう場所で「左右の確認」に意識が行きすぎてしまうと、「後続車」や「道路上の障害物」に対する意識が弱くなったりして、かえって危険な場合があります。

つまり、「力」というものは、その都度その都度、適切なところに、適切な分だけかければ良いのです。

車を運転しながら、常に「右」と「左」と「前」と「後ろ」と「道路上の障害物」と「左右からの飛び出し」と「空からの落下物」と、全てに「100%の確認」をすることは、とうてい不可能です。

必ず、その都度、「ここは見なくても良いが、ここは見なくてはならない」という箇所があるはずなのです。

その見極めをきちんとすれば、「100%の安全確認」は維持できるのです。

このように、「手の抜きどころ」と「手を抜いてはいけないところ」の線引きをきちんとしておけば、仕事の「完成度」は高く保つことができます。

「手の抜きどころ」を適切に見つけるには、当然のことながら、ある程度の「熟練度」が必要となります。

どんなことでも、「熟練者」になるほど「力の抜きどころ」をきちんと見つけているものです。

「初心者」は、「力を入れる必要のないところ」にまで力を入れてしまい、余計なエネルギーや時間を費やしてしまう傾向にあります。

人間、やり慣れないことをやろうとすると、どうしても「無駄な力」が入ってしまうものです。

そのうち慣れてくれば、「無駄な力」も抜けてきて、本当に「必要なところ」だけに力を注ぐことができるようになります。

このような「熟練度」を高める要素として、まず「時間(=期間)」が必要となります。

しかし「手の抜きどころ」を見つけることは、「時間」だけの問題ではありません。

同じ時期に同じ仕事を始めた新人君たちの中にも、いち早く「手の抜きどころ」を見つける人もいれば、なかなかそれを見つけられない人もいます。

同じ仕事を同じ時間だけ続けていても、このような違いは生まれてしまいます。

その差は「時間」ではなく、「手の抜きどころを見つけよう」という意識があるか、ないかの違いなのです。

自分が「初心者」だからと言って、最初から「手の抜きどころは見つからない」と諦めるのではなく、「ここは手を抜いても大丈夫か?」と常に自問しながら仕事をこなしていくことが必要です。

「手を抜く」ことによって、「100%の力」を常に出す必要がなくなります。

逆に、常に「100%の力」を出し続けているという状態は危険です。

いざという時のために、普段は「100%の力」を出さずに事を進めていくというゆとりを持つことはとても重要です。

時間をうまく使えるようになるには、「手を抜いても完成度が変わらない」ということを常に目指すという、そういう姿勢が必要なのです。

(これまでの「時間をうまく使う方法」の記事一覧はこちら。)