さて、昨日の続きです。

「住所」の識別方法は、日本と欧米では異なっています。

日本の場合は1ブロックにつき「番号」が付与されますが、欧米では1つの道につき「名前」が付与されます。

「道」に名前がついているのといないのとでは、わかりやすさが違います。

日本の場合は、大きな道にしか名前がついていません。

このため日本では、人に道案内をする場合は「××の交差点を右に曲がって下さい」や「○○を目印にしてそこを左に曲がって下さい」というように、「目印」を中心に説明していくことになります。

ところが、欧米では、道そのものにたいてい「名前」がついています。

そうすると、人に道案内する場合は、「△△通りを東に進み、□□通りを左に曲がって下さい」というように、「道の名前」を使って説明することになります。

「道」に名前がついているのとついていないのでは、「道案内」をする方法が全然違ってきてしまうのです。

さらに、「道」に名前がついていると、「住所」だけでなく「交差点の呼び方」まで変わってきます。

日本では、「道」に名前はついていなくても、たいてい「交差点」に名前がついています。

しかし、この「交差点の名前」というものは、同じ名前の「地名」や「駅名」などがあったりして、少しややこしいです。

例えば、千葉県松戸市には、「稔台(みのりだい)」という名前の「交差点」があります。

しかし、「みのり台」と聞けば、松戸市民の多くは新京成電鉄の「駅名」のことだと思うことでしょう。

しかし、「みのり台の駅」と「稔台の交差点」では、ざっと1キロメートル近くは離れています。

「みのり台の交差点の近くのスーパーで会おう」と約束した場合、このことを知らない人は駅の近くの交差点のことだと思ってしまう可能性もあります。

このように、日本では「交差点」に名前をつけていても、その名前はすぐに「場所のイメージ」へとつながらないこともあるのです。

ところが、欧米では「道」そのものに名前がついていますから、「交差点」の名前も至ってシンプルです。

「A」という道と「B」という道の交差点は、単に「AとBの交差点」と呼ばれるのです。

従って、カーナビの案内も、日本では「あと何百メートルで、○○交差点を右」のような案内ですが、欧米では「あと何百メートルで、何通りを右」のようになります。

「交差点の名前に馴染みがないのに、交差点名で案内される」よりも、
「道の名前に馴染みがあって、道の名前で案内される」方が、誰にも分かり易いのです。

おそらく、外国から日本へ来た人は、この点で不便さを感じていることと思います。

ついでに、アメリカでは、街と街をつなぐような大きな道は、日本の「高速道路」を思わせるほど大きく、たいていは「番号」で呼ばれます。

そして、そういう大きい道の場合、全体的に「東西」に伸びているか「南北」に伸びているかによって、その道に入る際に「方角」を表して案内されます。

例えば、「33号線」という大きな道が、全体的に「南北」に伸びていたとします。

ある道から33号線に入ろうとする時、「33 North(33号線北方面)」あるいは「33 South(33号線南方面)」というように、「北」と「南」のどちらへ向かうべきかについて、地図のイメージと合致するように案内されるのです。

「道」に名前がついていて、さらに「方角」で案内されますから、そこに住む人々は「道の名前」を覚えてしまえば、たいていどこにでも行けるのです。

このことの便利さを一度体感してしまうと、日本のように「道に名前がついていない」ことによる不便さをいっそう感じてしまうことでしょう。

日本の場合は、おそらく「集落」という感覚が昔からあり、「1つのエリアで1つの名前」というように区別する慣習があったのでしょう。

そのため、日本では「道」に名前をつけるという発想が生まれなかったのかもしれません。

しかし、国土の広い欧米では、「街から街へつなぐ線」「家から家をつなぐ線」というように、「道(ライン)ごとに1つの名前」というように区別するのが都合が良かったのだと想像できます。

日本はブロック、欧米はライン。

この感覚は意外に知られていないかもしれませんが、非常に興味深いテーマと思います。