苦手を克服するにはどうすれば良いかを考えていくこのコーナー。

前回までは、

1.「感情」で嫌いなことでも、「理性」を高めて乗り越えよう

2.1つの偏った視点で物事を見るのではなく、「複数の視点」から観察しよう

3.複数の視点を持てたら、色々な方向から「バランス」をとろう

というところまでご紹介しました。

今回は「自立の心」というテーマで考えてみます。

苦手を克服するには、「自分の力でやるぞ」という意識を持つことがとても重要です。

私のように日々英語を教えていると、このことをとても痛感してしまいます。

指導する側の人間がどんなに意欲的になっても、肝心の本人が「自分の力でやるぞ」と思わなくては、苦手を克服することなどできません。

人は、「自分の力でやるぞ」という意識を持ってはじめて、自分の「本当の能力」を発揮するのです。

「自分の力でやるぞ」という意識のことを、ここでは「自立の心」と呼ぶことにしましょう。

何事も「自立の心」を持って取り組む人は、そうでない人に比べ、覚えるスピードも格段に早く、どんどん身につけていきます。

逆に「自立の心」が弱い人、つまり「他者への依存の心」が強い人は、平均的な人よりも物覚えが悪く、身につけていくスピードも低いものです。

例えば、ある生徒がさほど難しくもない文法項目について学習していたとします。

私の教室では、基本的には生徒が自分で文法書を読んで考え、その内容を教師に説明するというスタイルで授業を行っています。

さほど難しくもない文法項目なのですから、たいていの生徒はすぐに理解ができます。

ところが、生徒によっては、「全然分かりません」と言ってくる場合があります。

「全然分かりません」と言われた時、教師としては「ああ、この人には自分で理解する能力がないのだな」と決めつけてしまうのはいけません。

分からないと言ってくるのは、たいていは生徒自身が「自分でなんとか理解するぞ」という意識が弱いことに原因があります。

「自分でなんとか理解するぞ」という意識を持っている生徒ならば、仮に本当に難しい文法項目だったとしても、どんどん理解していってしまいます。

ところが、「自分でなんとか理解するぞ」という意識が弱いと、本当は理解できる能力があったとしても、理解に到達する遥か手前の段階で「分かりません」とギブアップしてしまうのです。

そういう時は、教師が「親切に教える」ということをしてしまうと、ますます本人の「自立の心」が弱くなり、よけいに「分からない」という状況が続いてしまうこともあるのです。

もちろん、「自分でなんとか理解するぞ」という「自立の心」は、その時々の状況や体調などによって変化します。

仕事などで疲れていたり、精神的に参ってしまう出来事があった後だったり、何かしらの原因によって「自立の心」は弱まってしまいます。

その日によって「自立の心」が弱まることは人間ならば誰にでもあります。

問題なのは「慢性的」に自立の心が弱い人の場合です。

そういう人は日頃から「自立の心を自分で育てる」ということを意識しなくてはなりません。

自立の心が弱ければ、単に「できるはずのことができない」という状況になるだけでなく、精神的にとても「イライラしやすい」という問題も出てきます。

慢性的に自立の心が弱い人は、望ましい結果が出ないとすぐに「イライラ」してしまいます。

特に「苦手なこと」に取り組んでいる時は、「望ましい結果」がなかなか出ないわけですから、すぐに「イライラ」してしまうでしょう。

自分の「自立の心」が弱いかどうかは、自分が「イライラしやすいかどうか」である程度判断することができます。

「イライラしやすい」ということは、「自分でなんとかしよう」という意識が今ひとつ足りないのが原因なのかもしれません。

これは「理性を高める」と関係があると言えますね。

「自分のことは自分でやる」
「人に頼らず、自分で解決する」

こういう意識を高く持つだけで、「できない」と思っていたことがカンタンにできてしまうことがあるのです。

「自立の心を持つ」ということは、「苦手を克服する」ためにはとても重要なポイントと言えますね。