日々、英語を教えていると、「苦手なこと」に取り組んでいる生徒の姿を目の当たりにすることがしょっちゅうあります。

「苦手なこと」を克服するのは楽なことではありませんが、克服した後は「なんであんなことに苦労していたんだろう?」と思うくらいあっけない気がしてしまうこともあります。

当ブログでは、不定期で「苦手を克服するために」というテーマでお届けしています。

前回は「上手な人のお手本をよく観察しよう」という観点で書きました。
(過去記事はこちらからどうぞ。)

今回も「お手本」という共通点をテーマに、もう少し掘り下げて行ってみましょう。

英語を勉強していて「お手本」となるのは、当然、英語を母国語とする人達、いわゆる「ネイティブスピーカー」達ですね。

彼らがどうやって英文を作っているのか、どうやって単語を選んでいるのか、どうやって発音しているのか、などなど、色々なポイントから観察していって、それをしらみつぶしに身につけていけば、誰だってネイティブに近づけていけるはずですね。

ところが、ネイティブというお手本を目の前にしながらも、なかなか近づいていけない、という場合が当然あります。

その原因は、以前も書いた通りで、「観察するポイントが少ない」ということがまず挙げられます。

しかし、それだけではないかもしれません。

もっとシンプルに考えると、「観察するポイントが少ない」以外にも、別の原因で「お手本」と「自分」が近づいていかない理由があるのかもしれません。

その1つに、「お手本」と「自分」の距離が「遠すぎる」ということが挙げられます。

英語に限らず、何かを身につけようとして「お手本」をよく観察したとしても、「自分」との距離が遠く離れていたのでは、なかなか近づいていくことはできないでしょう。

「お手本と自分の距離が離れている」というのは、文字通り「距離が遠い」という場合もありますし、また「時間的に離れている」ということも考えられます。

例えば、英語の発音を苦手としている人が、ネイティブのような発音を身につけようとしたとします。

「お手本を観察する」というのは、いわば「インプットの行為」と言えます。

そして、「自分が発音してみる」といのは、いわば「アウトプットの行為」と言えますね。

お手本をインプットするのは大変結構なことでしょうけれど、そのインプットをした後、何時間も経ってからようやくアウトプットして「マネ」しようとしても、どこに「違い」があるのか気づきにくいですね。

当たり前の話ですが、「お手本のインプット」と「自分のアウトプット」は、時間的に間をあけない方がより高い効果を得られます。

そんな当たり前の話なのですが、ふと、私の教室の生徒達を見ていると、「家でたくさんネイティブのCDを聞いてきました」と言いながらも、「練習するときには何も聞かずにひたすら自分で発音練習しています」という人もいるのです。

「聞いてからすぐに言う」とか、「言おうとする直前に聞く」とか、そういうことをしないでいれば、長い期間、練習を続けていてもなかなか上達しないのは当たり前のように思うのです。

これは英語の発音に限った話ではありませんね。

勉強でも、仕事でも、スポーツでも、楽器演奏でも、創作的な活動でも、なんでもかんでも、「お手本と自分」が遠いところにあるようでは、いつまでも上達していかないという悲しい状況になってしまいます。

「お手本」をいくつもの観点で観察する、というのは大事なことですが、もう1つ、「お手本と自分の距離を近づける」という基本的なことも忘れないようにしましょう。