苦手を克服する方法を考えていくシリーズ。

それを考える前に、今日はまず、「苦手なことは、どうして苦手なのか?」ということについて考えてみることにしましょう。

人が何か決断をしたり、行動に起こしたりする時には、2つの「価値基準」があると考えられます。

それは、「感情」と「理性」です。

「感情」とは何でしょう? そして「理性」とは何でしょう?

以下、「感情」と「理性」について、それぞれ対応するようにまとめてみました。

<感情>

 ・「好き」か「嫌い」かを基準としている

 ・「心地よい」か「心地悪い」かを基準としている

 ・「理由」がなく、生まれもった先天的なもの

 ・「エネルギー」や「推進力」がある

 ・「コントロール」できるものではない

 ・「頭」というよりは「心」で反応するもの

<理性>

 ・「良い」か「悪い」かを基準としている

 ・「大事である」か「大事ではない」かを基準としている

 ・「理由」があり、後天的に学習されたもの

 ・「エネルギー」は弱いが、「制御する力」がある

 ・「コントロール」を可能にする

 ・「心」というよりは「頭」で考えていくもの

このように、「感情」と「理性」は、相反する逆のもの同士と言えます。

ここで着目すべきは、「理性」は誰にでもあるとは言えなくても「感情」は誰にでもあると言える、ということです。

健康な人間ならば、生まれたときから「感情」というものを持っているのです。

赤ん坊だって「心地よい」とか「心地悪い」などを感じるものです。

しかし「理性」は違います。

「理性」は、生まれた後で、経験などによって失敗や成功のプロセスから学習する中で、自分の思考を使って少しずつ形成していくものです。

「理性」がない人の精神は「未熟」であると評価されることが多く、逆に「理性」がある人の精神は「成熟」していると評価されることが多いですね。

人として成長することによって「理性」が芽生え、発展していくのです。

つまり、「感情」は誰にでもあるもので、それを制御していくのが「理性」ということになります。

ここで、「感情」と「理性」という観点をさらに「プラス」と「マイナス」とに分けて区別してみましょう。

 A:「感情」としての価値基準で「プラス」と判断されるもの・こと
   (例:好きなこと、心地よいこと)

 B:「感情」としての価値基準で「マイナス」と判断されるもの・こと
   (例:嫌いなこと、心地悪いこと)

 C:「理性」としての価値基準で「プラス」と判断されるもの・こと
   (例:良いこと、大事なこと)

 D:「理性」としての価値基準で「マイナス」と判断されるもの・こと
   (例:悪いこと、大事ではないこと)

人が何かについて「決定」したり「行動」したりする際には、大まかに言えば、このA~Dの4つの区分に振り分けた時に「一番比重の大きいもの」が選ばれると考えられます。

例えば、タバコを吸ったことがない人が、誰かにタバコを勧められたとします。

その時、勧められた人は、タバコに関して、「感情」として「プラス」と「マイナス」でふるいにかけ、同時に「理性」として「プラス」と「マイナス」にふるいにかけます。

Aの比重が一番大きかった人というのは「タバコを吸うことはかっこいいし、タバコのにおいが好きだし、タバコというものが好きだから、吸ってみよう」というように、「感情によるプラス」が大きく働いた人と言えます。

Bの比重が一番大きかった人は、Aとは逆で「タバコはくさいし、煙たいし、においを嗅ぐだけで気分が悪くなるから嫌い、だから吸うのはやめよう」というように、「感情によるマイナス」が大きく働いた人と言えます。

Cの比重が一番大きかった人は、「タバコを吸えば勧めてくれた人との仲間意識が芽生えるし、気分が落ち着く作用があるから吸ってみよう」というように、「理性によるプラス」が大きく働いた人と言えます。

Dの比重が一番大きかった人は、「タバコは健康によくないし、お金もかかるし、中毒性があって辞めるのが大変だからやめておこう」というように、「理性によるマイナス」が大きく働いた人と言えます。

人によって、A~Dのどの比重が一番大きいかは異なりますし、同じ人物であっても状況やタイミングなどによって異なります。

この例に限らず、人が何かを「決定」したり「行動」したりする際には、このように「感情」と「理性」による「プラスとマイナス」のバランスが基準となるのです。

では、「苦手なこと」というのは、上記の4つの中ではどこに分類されるでしょうか?

ちょっと考えてみればお分かり頂けると思いますが、「苦手なこと」というのは、たいていは「B」のところに分類されるはずです。

つまり、「感情としてマイナス」ということから「苦手」という意識が芽生えてしまうのです。

もちろん、「A(感情としてプラス)だけど苦手」ということもあり得ます。

しかしそれは多数派ではありません。

基本的には「嫌いだし、苦手」というのが最も一般的と思われます。

では、このことから何を考えていけるでしょうか?

ちょっと長くなりましたので、続きはまた今度!

<続く>