英文法の世界には、なんとも不思議な「言葉」がたくさんあります。

文法用語として、どうしてそういう「名前」になったのか、理由がよくわからないのです。

そういう文法用語の中に「修飾」という表現があります。

「修飾する」ということを生徒達に説明する度に、なんで「修飾」という表現になったのか考え込んでしまいます。

「修飾する」とは、どういうことでしょうか?

本校の授業では、文法をよく知っている人も、よく知らない人も、最初の頃に必ず学ぶのがこの「修飾する」ということについてです。

「修飾」という字を見てみると、「修める」と「飾る」という文字が使われているのが分かります。

しかし、「修飾する」ことによる効果は「飾る」のではなく、全くその逆、「制限を設ける」ということなのです。

ちょっとやってみましょう。

「イヌ」という言葉を修飾してみるとします。

すると、「大きいイヌ」「可愛いイヌ」などとなります。

これが「修飾する」ということです。

これは「飾った」のでしょうか?

そうとも言えるかもしれませんが、むしろ「制限を設けた」という方がイメージがわきやすいと思います。

ある女の子が、父親に対して、「私、イヌがほしい!」と言ったとします。

この場合、我が子に甘い父親は「イヌならなんでもいいから買ってきてあげよう。」と思ってしまいます。

しかし、もしその女の子が「私、大きいイヌが欲しい!」と言ったならば、父親は「少なくとも小さいイヌはダメだな」と思います。

さらに、もしその女の子が「私、大きくて、可愛いイヌが欲しい!」と言ったならば、今度は、「小さくてもダメで、可愛くないのもダメ」というように、選ぶイヌの種類が「制限」されていきます。

修飾部分となる語を1つ付け加えると、その度に「1つの制限」が追加されていくのです。

あるいは、「歩く」という言葉を修飾してみましょう。

これはイヌという「名詞」と違い、「動詞」です。

AさんがBさんに対して「歩きなさい」と言えば、それは「立ち止まっているBさんに、とにかく歩きなさい」という意味になります。

これが仮に「ゆっくり歩きなさい」となった場合には、おそらく「既に歩いている」であろうBさんに対して、「ゆっくり」という制限を設けたと考えられます。

さらに、「ゆっくり、真っ直ぐ、歩きなさい」と言えば、言われたBさんは、「速く歩くのはダメで、フラフラとよろけながら歩くのもダメ」というように、さらにもう1つ「制限」が追加されたと思うはずです。

つまり、「修飾する」というのは、「飾る」という文字が使われていますが、それよりはむしろ「制限を設ける」という方がイメージとしては近いのです。

事実、英文法の世界では、「形容詞」が名詞を修飾する場合の用法は「限定用法」という名前がついており、また「関係詞」が導く節が名詞を修飾する用法のことを「制限用法」と言います。

このことからも、「修飾する」という言葉に対しては、「飾る」というイメージではなく、「制限を設ける」というイメージで理解するのが良いのです。