皆さん、「新聞」という言葉をローマ字で書くとどうなるかご存じですか?
「shinbun」だと思った人、いませんか?
ところが、実際は「shimbun」と書かれているのがほとんどです。
日経新聞、読売新聞、朝日新聞、産経新聞、その他、どの新聞社も、自分の新聞の名称をローマ字(英語)で書くと「shimbun」という綴り(つづり)で表記しています。(日経新聞は今は「Nikkei」としているようですが、それはさておき。)
「しんぶん」という日本語には2つの「ん」があります。
最後の「ぶん」の「ん」は「n」で良いのですが、最初の「しん」の「ん」の部分は「m」になっています。
これは、その「次の文字」によって変わってくるのです。
「次の文字」が「b」と「p」と「m」の場合、「ん」はローマ字では「n」ではなく「m」で表記されます。
これは「b」と「p」と「m」のいずれも「上と下の唇をぴったり閉じてから発音する」という共通点があるからです。
唇を閉じて「ん」と発音するのならば、それは「n」ではなく「m」です。
試しに、「なにぬねの」と発音してみれば、唇が閉じないことがお分かりでしょう。
つまり、「n」の音というのは、唇を閉じずに発音されるものなのです。
逆に唇を閉じるのは、「まみむめも」や「ばびぶべぼ」や「ぱぴぷぺぽ」です。
これ以外の音は唇を閉じることはありません。
そういうわけで、日本語の「ん」に当たるローマ字は、直後の文字が「b」か「p」か「m」の場合には、唇をぴったり閉じる「m」で表記されるのです。
ただし、これはヘボン式ローマ字というもので、日本式ローマ字や訓令式ローマ字とは異なります。
今の日本では、駅名やパスポート上の人名など、多くの場合にヘボン式が一般的に使われています。
例えば、「新橋」という駅名は「Shinbashi」ではなく「Shimbashi」と書かれています。
これは「b」の前の「ん」なので、唇がぴったり閉じることから「shin」ではなく「Shim」というように「m」となっているのです。
ところが「新宿」の場合は「Shinjuku」であり、同じ「新」という漢字であっても「Shin」というように「n」が使われます。
他にも、同じJR武蔵野線の駅でも、「新八柱(しんやはしら)」は「Shin-Yahashira」であるのに対し、「新松戸」は「Shim-Matsudo」のようになっています。
実はこのことは「英単語」にも当てはまります。
例えば「in」という接頭辞は、別の単語の前にくっついて反対の意味を作ります。
「adequate(十分な)」という言葉の前に「in」がくっつくと「inadequate(不十分な)」という意味の単語が出来上がります。
ところが、単語の先頭が「b」や「p」や「m」となっている場合には、接頭辞は「in」ではなく「im」となるのが普通です。
例えば「patient(忍耐強い)」という言葉の反対語は「impatient(我慢できない、辛抱強くない)」という言葉で、これの接頭辞は「im」となっています。
これは「patient」の先頭が「p」なので、これに合わせて「im」になっているものと考えられます。
他にも、
「mortal(死ぬ運命の)」← →「immortal(不死の)」
「balanced(釣り合った)」← →「imbalanced(不均衡の)」
なども同様です。
このように、日本語での「ん」という音は、後ろに続く文字によっては「n」ではなく「m」になることがあります。
もちろん、これには例外もあります。
「input」などは「imput」ではありません。
「b」や「p」や「m」の直前がすべて「m」になるわけではありません。
ただし、接頭辞などで「in-」か「im-」かで迷った場合には、基本的には上記のようなルールがあるということを覚えておくと便利です。
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