さて、前回の続き、行きます。(前回の記事はこちら。)
「知性」という言葉について、皆さんはどう思いますか?
人から「あなたは知性のある人だ。」と言われてどんな気分になりますか?
あるいは、直接自分にではなく、誰かが自分のことを指して「あの人は知性のある人だ。」と別の誰かに話していたとしたら、どんな気分になりますか?
おそらく、自分のことを「知性がある」と評価してもらえたならば、たいてい誰もが嬉しく思うのではないでしょうか。(まあ、現実はどうであれ(笑))
少なくとも「あなたには知性が感じられない」と言われるよりは、「あなたからは知性を感じる」と言われた方が遥かに良いのではないかと思います。
「知性」を持つためには、「知識」と「知恵」を持たなくてはなりません。
なぜなら、前回記事でも書いたように、「知性」というのは「知識&知恵を使おうとする性質」のことだからです
知識を使い、知恵を使う。
こういうことをしようと試みることで「知性」というのは高まっていくのです。
ところが、「知識」も「知恵」も、ただやみくもに使おうと思ってもなかなかうまくいきません。
そこには「客観性」というものが必要となります。
「客観性」。
これの反対は「主観性」。
「主観」の「主」は「あるじ」とも読めます。
他に「ぬし」とも読めます。
「あるじ」も「ぬし」も「ある場所にずっといて、そこを支配している者」という意味で使われます。
ある場所にずっといる、ということは、そこから見える景色は「1つだけ」ということになります。
つまり、「主観」というのは、「常に同じ1つの視点から物事を見ること」と言えます。
これに対し、「客観」の「客」は、いわゆる「お客さん」の「客」です。
「客」というのは、1つの場所にずっといるのではなく、色々なところからやってきては色々なところへと去っていくものです。
つまり、「客観」というのは、「いくつも異なる視点から物事を見ること」と言えます。
客観については、以前からこのブログでも、あるいは他のところでも、私は何度もお話ししてきました。
私との付き合いが古い人は「またか」と思うことでしょう(笑)
でもまあ、もう少しおつきあいください。
私がこれまでの英語教師としての経験から学んだことの1つに、自分の中の「客観性」を高めていけば、その分だけ「知性」も高まる、ということが挙げられます。
「客観性」を高めるということは、つまり、自分の目で普通に見えるものや、自分が自然に考えてしまう物事の捉え方ではない、「別の見方」を身につけるということです。
例えば、あなたの仕事のやり方にけちをつけてきた人がいたとします。
あなたは、自分では、あなた自身の仕事のやり方に対して「何一つ間違っていることはない」と思ったとします。
ところが、けちをつけて来た人の言い分では、あなたの仕事のやり方では、その人を含め、他のみんなの迷惑になっているからなんとかしてほしい、ということのようです。
そんなことを言われて、仮にあなたが「どうしても自分が間違っているとは思えない」と感じたとしたら、この話はどうなっていくでしょうか?
たぶん、その人とあなたの間に「バトル」が勃発してしまうことでしょう。
あなたはあなたで、自分のものの見方を変えようとしない。
その人はその人で、自分のものの見方を変えようとしない。
ものの見方が違ってしまうのは、人間同士ならばよくあることです。
しかし、お互いが「自分の主観」を貫き通そうとしてしまうと、そこには衝突が起きてしまうのです。
そこで役に立つのが「客観性」というものです。
「客観性」を持った人ならば、「相手がどのように物事を観察しているのか」ということを頭の中で想像して浮かべることができます。
そう、「他人がどんなところから、どんなものを、どんな風に観察しているのか」を想像するのです。
ここで「他人が見ているものを想像するだなんて、そんなことは無理だ」と思った人は、まさに主観に支配されてしまっているかもしれません。
しかし、他人が見ているものを想像することは、不可能ではありません。
そういう力は、普通に健康な人ならば誰だって持っているものです。
大事なことは、そういう「他人が見ているものを想像する力」が自分にもあると認識することです。
そして、もしも自分が客観性を持って相手と話をしたならば、きっと「バトル」には発展しません。
「なぜ、相手は自分にわざわざそんなことを言ってきたのだろう?」
おそらく、相手から見えることの中に、その人にとっては「真実」と思えるものがあるのでしょう。
あなたの仕事のやり方の何かが、その人に迷惑をかけた、という真実が、その人の目には映ってしまっているのでしょう。
「自分からは見えないけれど、他人からは見えている。」
そういうことが絶対にないと、言い切れますか?
たぶん、自分からは見えていないことでも、他人からはよく見えていることはたくさんあるはずです。
そして、そういう「他人の目」を想像して、「他人が見ているもの」を想像すること。これが「客観性」というものなのです。
ですが、「客観性」はあくまでも「想像力」です。
完全に「他人の目」になれるわけではありません。
でも、そういう客観的なものの見方は、練習していけばうまくなっていくものです。
上手になれば、「想像」であっても、かなりの精度で「他人が見ているもの」を自分の頭の中で映し出せるようになっていきます。
ここまで読んで、「自分には客観性が乏しいかもしれない」と思った人は、まずは「客観性というものは自分にもあるはずだ」と言い聞かせるところから始めると良いと思います。
そして、「自分からは見えないことでも、他人からは見えていることがある」と自覚した上で、「他人はいったい何を見ているのだろう」というように、自分自身の目をいったん閉じて、頭の中で想像力を使って、視点の「数」を増やしていくのです。
視点の数が増えるということは、「自分だけの目(=主観)」ではなく、「お客さんの目(=客観)」を持てるようになったということ。
そういうことを意識して、客観性を高めていこうと努力した人は、視点の数が増えた分だけ「知性」を発揮するのだと思いま