前回に引き続き、「暗唱のメリット」についてご紹介します。

前回は、「暗唱」によるメリットとして「量を確保できる」という点を挙げました。

この点は、暗唱の最大の強みとも言えますが、暗唱には、もう1つ、肝心なメリットがあります。

それは、「正しくアウトプットできる」という点です。

皆さんは、英語で会話をする時に、自分の英語がどれだけ正確なのか、意識しているでしょうか。

おそらく、かなりネイティブに近い英語感覚を持っている人でさえ、英語が「外国語」である以上、「正しく話す」ということがきちんとできている人は少ないでしょう。

「正しい英語」というのは、次のようなことを指します。

 1.単語の選び方が適切であり、正しい。(語彙の知識、文法の知識)

 2.単語の「変化のさせ方」が適切であり、正しい。(文法の知識)

 3.単語の「並べ順」が適切であり、正しい。(文法の知識)

 4.単語やフレーズ、そして文全体の「発音の仕方」が適切であり、正しい。(発音の技術)

もちろん、「正しい」という基準は一律ではありません。

アメリカ人とイギリス人とオーストラリア人でも「正しい英語」の基準が違うこともあります。

同じアメリカ人の中でも、東部と南部では違っていても不思議ではありません。

ここで言う「正しい英語」というのは、地域ごとにあるバラツキを標準化し、「共通の英語として認識される程度の正しさ」を持った英語のことです。

ところが、「共通の英語として認識される程度の正しさ」すら持たない英語を話す人が、日本人にはとても多くいます。

そういう日本人が好む英語学習のスタイルの筆頭が「フリー会話」です。

「フリー会話」という形で、自分の好きなように会話を進めていくのは、「瞬発力」を鍛える上では非常に有効です。

しかし「フリー会話」という形では、いつまでも「自分流の英語」しか話せません。

「自分流の英語=正しい英語」ならば良いのですが、「自分流の英語=正しいとは言えない英語」となっている人がほとんどです。

「単語」の選び方も、変化のさせ方も、並び順の決め方も、バラバラな人がいます。

また「発音」もバラバラな人がいます。

かくいう私(久末)自身も、16歳の頃にアメリカに留学していた時、毎日の生活で自分が発する英語は「正しいとは言えない英語」だったと思います。

「フリー会話」は、どうしても「自分流」になってしまうので、「正しい英語」を自分の身に刻んでいくことは難しいのです。

ところが、「音読」や「暗唱」は違います。

「音読」や「暗唱」では、元々「ネイティブ」が書いた英文が使われます。

つまり、はじめから「共通の英語として認識される程度の正しさ」を持った英語が使われるのです。

その「正しい英語」の中には、上記の「1~3」までのポイント、つまり、「正しい語彙」と「正しい文法」が含まれています。

これに加え、「音読」の時点で「正しい発音」を身につけるように訓練を受ければ、自分が発する英語が、上記の4つの全てにおいて「正しい英語」となります。

もちろん、「発音の技術」は、なかなか独学では身につきません。誰かしら、コーチとなる人に就くのが良いでしょう。

それでも、仮に「発音」だけは独学で行ったとしても、「音読」や「暗唱」であれば、少なくとも「1~3」に関しては「正しい英語」としてアウトプットの訓練になります。

ひたすら時間をかけて英語を勉強しても、「正しさを持った英語」を繰り返していくのと、「正しさを持たない英語」を繰り返していくのでは、身につく英語の「質」そのものが大きく違ってきます。

以上のように、「暗唱」は「量の確保」ができるというメリットだけではなく、「正しくアウトプットできる」という、大きなメリットを持っているのです。

さあ、いかがでしたか?
次回からは、暗唱の手前の段階の「音読」にフォーカスを当ててご紹介していきます。

どうぞお楽しみに!