前回までは、3つある「音読の心構え」のうち、「1つ目」と「2つ目」を書きました。
今回は最後の「3つ目」について書きます。
<音読の心構え>
1.スペル(文字)と発音の関連性に注意すること。
2.英文の構造(品詞・文法項目・文型)を意識すること。
3.英文の意味、単語の意味を捉え、そこから「映像化」しながら音読すること。
3つ目は、「映像化」あるいは「イメージ」という言葉がキーワードとなります。
人は、言葉を理解する時、「文字」や「音」から、必ず何かしらの「イメージ」を頭に浮かべます。
逆に言えば、「イメージ」が浮かばないものは、その人にとっては「理解できない」ということとも言えます。
例えば、次の「言葉」を読んで、頭の中に「イメージ」は浮かびますでしょうか?
・つき
・サル
・トンネル
・かぜ
・さくら
いかがでしょうか?
これらの「文字」を見て、あるいは「音」を聞いて、頭の中に、自分なりの「イメージ(映像)」が浮かんだのではないでしょうか。
では、次の言葉はどうでしょうか?
・ミシガシネス
・とんよ
・ネネロッコ
・・・・これらは私が今適当にキーボードを叩いて作った造語です。
もちろん、この「音」の響きから、何かしらのイメージを浮かべることができた人もいるかもしれませんが、「映像にできない」人の方が多かったはずです。
言葉には、「理解」と同時に必ず「イメージ」があります。
それは、「名詞」に限った話ではなく、「動詞」や「形容詞」など、他の言葉についても同様です。
「歩く」と「歩む」では、同じ「歩」という文字が使われますが、2つは同じイメージでしょうか?
両者は、実際の使われ方も違いますが、そもそも「イメージ」が違っていると言えます。
「歩く」よりも、「歩む」の方が、なんとなく「1歩1歩、しっかり、前へと進む」という感じがします。
では、「寒い」と「冷たい」はどうでしょう?
「寒い」という言葉を見たり聞いたりした時に浮かぶイメージと、
「冷たい」という言葉を見たり聞いたりした時に浮かぶイメージとでは、
両者は同じではありませんね。
つまり、「言葉」が分かれているということは、単に「文字」や「音」が分かれているだけでなく、同時に「イメージ」も分かれているということになるのです。
さて、では、今度は「単語」のレベルではなく、「文」のレベルについても考えてみましょう。
以下の文章を、「声に出して」ゆっくり読んでみて下さい。
・私達は、寒くて暗いトンネルの中、手を取り合って、ゆっくりと歩み続けました。
・私達は、柔らかくて暖かな砂浜の上を、会話もせず、少し離れて歩き続けました。
いかがでしょうか?
浮かんだイメージは全く違いますね。
場面もそうですし、「私達」という人間の距離感も違っています。
人は、言語を理解する上で、「文字」を見ただけで、あるいは「音」を聞いただけで、頭の中に「イメージ」を作り上げることができるのです。
このことを、「英語の音読」に当てはめて考えてみましょう。
音読の心構えの「2つ目」のポイントで、「文法」に関する意識を持つことに成功したならば、音読しようとする英文の「意味」を理解することができる、ということになります。
そして、「意味」を理解したならば、必ず「イメージ」を浮かべることができるということにもなります。
例えば、次の簡単な英文を見てみましょう。
・ My son ate my hamburger.
たった5つの単語で出来た英文ですが、1つ1つの単語の「品詞」と「文法項目」、および全体の「文型」は理解できるでしょうか。
ここでは、敢えて「日本語訳」をつけません。
上の英文を、声に出して音読しながら、同時に、その英文のイメージを頭に浮かべてみて下さい。
1つ1つの単語に「イメージ」があるはずです。
そして、1つ1つの単語だけでなく、「文全体」でまた1つの「イメージ」が出来上がるはずです。
いかがでしょうか?
なんとなくでも構いませんが、とにかく「イメージ」として、その場面を「映像化」してみてほしいのです。
日本語でできたのと同じように、英語でも、人は「文字からイメージ」を作ったり、あるいは「音からイメージ」を作ったりすることができるのです。
さて、以上で「音読の心構え」の3つのポイントについて、すべて解説しました。
しかし、この3つポイント全てを同時に意識することは非常に困難です。
「1つ目」の「文字と発音」に意識が行き過ぎたり、あるいは「2つ目」の「文法」に意識が行き過ぎたり、あるいは「3つ目」の「イメージ」に意識が行き過ぎたり、普通は、どこかに意識が偏ってしまうものです。
よほど自分で意識していないと、この3つのポイントを同時に意識するのは、とっても困難なのですよ。
困難なのですが、そのことをやろうと意識するのとしないのとでは、音読学習による効果に大きな違いが出てきます。
なので、まずは、1つずつをしっかり意識するところから始めると良いです。
1つ目のポイントのうち、細かく、例えば「f」の発音だけ気にしてみようとか、「ou」の発音だけ気にしてみようとか、意識を一部分だけに集中させたり、
あるいは2つ目のポイントのうち、「品詞」だけを気にしてみようとか、「文型」だけ気にしてみようとか、
はたまた3つ目のポイントだけを気にして「映像化」を一生懸命やってみようとか。
こういう風にそれぞれのポイントに分けて個別に練習した後で、次に「1つ目と3つ目のポイントを同時に意識してみよう」とか「2つ目と3つ目を同時に意識してみよう」とか、少しずつ組み合わせていくと良いでしょう。
とにかく、「音読」をしながら、何も考えずに、ただ「声にして音を出す」ということを機械的にやってはダメです。
頭の中を忙しくしながら「音読」というものを繰り返していくと、そのうち、「1~3」の全てのポイントを意識しながら音読することができるようになります。
その感覚は、まさに私達が母国語を話すときの感覚にとても近いのです。
たかが音読、されど音読。
「音読の心構え」の3つのポイントを意識しながら音読練習を続けた人は、それらを意識しないで練習した人に比べて、何倍も早く、何