英語を勉強している日本人を苦しめる文法項目の1つに、「自動詞と他動詞の区別」というものがあります。
「自動詞」と「他動詞」って、なんでしょうか?
これをうまく説明できる人は、英語の教師でも意外に少ないのではないかと思います。
「自動詞は目的語と必要とせず、他動詞は目的語をとる」
このような説明は、一見正しいようでありながら、実は大きな混乱を招くものとも言えます。
なぜなら、このような説明では、「日本語での区別の仕方」と「英語での区別の仕方」を分けていないからです。
日本語での自動詞と他動詞の区別
英語での自動詞と他動詞の区別
これらは同じように扱ってはいけません。
では、どのように説明すれば良いでしょうか。
以下、本校の文法書の説明から抜粋して説明します。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
動詞は、文中での働きによって「自動詞」と「他動詞」の2種類に分類することができます。
「自動詞」の「自」というのは「自分」のことで、「他動詞」の「他」というのは「他人」のことだとすぐに想像がつきます。
ここでの「自分」と「他人」というのは「文の中」での話なので、文の中での「自分」というのは、すなわち「主語(S)」のことを指し、
また、文の中での「他人」というのは、すなわち「目的語(O)」のことを指すと覚えておきましょう。
さて英語では、「文」という単位で見た時に、「目的語を持っている動詞は他動詞」で、逆に「目的語を持っていない動詞は自動詞」というように区別されます。
例えば、「eat(食べる)」という動詞(過去形は「ate」)の場合、「I ate an apple.(私はリンゴを食べた。)」という文では「ate」は「an apple」という目的語を持っているので、この文での「ate」は「他動詞」ということになります。
しかし「I went to bed right after I ate.(私は食べたすぐ後に床に着いた。)」という文では、「ate」は目的語を持っていないので、この文での「ate」は「自動詞」ということになります。
つまり英語では、「文全体を眺めた際に、動詞が目的語を持っているか否か」によって「自動詞」か「他動詞」かを区別することになります。
一方、日本語の文法にも「自動詞」と「他動詞」の区別があります。
しかし、日本語の文法における「自動詞」と「他動詞」というのは、「文中で目的語を持っているか否か」によって区別するのではなく、その動詞1語を見て、それが「目的語を持つことが可能か不可能か(あるいは目的語をつけてみて、自然か不自然か)」によって区別します。
例えば、「閉める」という動詞は、「ドアを閉める」や「蓋を閉める」などのように「目的語」を持つことが可能(自然)ですから「他動詞」ということになります。
一方、「閉まる」の場合は、「ドアを閉まる」や「蓋を閉まる」とは言えません(自然ではありません)から、「目的語」を持つことができない動詞ということになり、つまりは「自動詞」ということになります。
このように、英語と日本語では「自動詞」と「他動詞」の区別の仕方が異なります。
日本語では、文中で実際に目的語を持っているかどうかは関係なく、ある動詞を辞書で引けばそれが「自動詞」か「他動詞」のどちらであるかが記載されています。
しかし英語では、多くの動詞は辞書には「自動詞」と「他動詞」の両方が載っています。
これはつまり、英語では「文」によって、1つの動詞が「自動詞」として機能したり、「他動詞」として機能したりすることを表します。
ただし英語でも、辞書の表記で「他動詞」の用法が先に記載されている場合は、原則的に「他動詞」として扱われ、また「自動詞」の用法が先に記載されている場合は、原則的に「自動詞」として扱われます。
例えば「tell」などは「他動詞」の用法が先に記載されているので原則的には「他動詞」の扱いとなり、また「come」などは「自動詞」の記載が先なので「自動詞」として扱われるのが一般的、ということになります。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
以上のように、「自動詞と他動詞」の区別の仕方について説明する際は、日本語の場合と英語の場合とで分けて考えなくてはなりません。
「tellは他動詞だ」と教えるのではなく、「tellは、主に他動詞として機能するが、文によっては目的語を伴わずに自動詞として機能することもある」と説明しなくてはならないのです。
※上記の説明が書かれた文法書「読んでつながる英文法(2011年刊)」は、ネットのみで販売しております。詳しくはこちらのページをご覧ください。