<前回の続き>
前回は、「話し上手」になるためには、「見えないところを見る力」を鍛えることがとても重要だ、と書きました。(前回記事はこちら)
「見えないところを見る力」というのは、文字通り「見る」ということではなく、他人が頭の中で「何を考えているのか?」を想像する、ということですね。
この力が弱い人は、社会で生きていく上でどのような状況に置かれることになるでしょうか。
例えば、「自分の上司」が、「見えないところを見る力」の弱い人だったということを想像してみてください。
その上司は、こちらが一生懸命仕事をしていても、その気持ちを理解することもなく、無理難題を押しつけ、仕事をどんどん振ってくることでしょう。
仮にこちらが「そんなには無理です、私には処理しきれません」と訴えたとしても、こちら側の気持ちが分からない上司は、「うるさいうるさい、黙ってやれ!」と一蹴してくるかもしれません。
そんな上司に対して、尊敬の気持ちを持てるはずがありません。
もしかしたら「あんな上司の言うことなんか、素直に聞いてやるもんか!」と反抗的な態度を示すようになってしまうかもしれません。
そして、そんな上司は、自分以外の誰に対しても同じ態度でしょうから、そのうち、「誰からも嫌われる存在」となってしまう可能性だってあります。
そうやって「見えないところを見る力」が弱い上司は、いつしか、組織から「孤立」していくのです。
この話は「上司」だけの話ではありません。
今度は「自分の部下」が、「見えないところを見る力」が弱かった場合を想像してみましょう。
「見えないところを見る力」が弱い部下というのは、こちらが要求している結果とは全然違う方向性の結果を、何の躊躇(ちゅうちょ)もなく提出してくるような部下と言えます。
「この仕事はこういう風にやってくれ」と伝えておいたにも関わらず、「できました!」と意気揚々として持ってきた結果が、思わず「なんじゃそりゃ?」と言いたくなるほどトンチンカンなものだったりします。
こちらが求めることがなんなのかを察知せずに、「自分が好きなように解釈したものをそのまま提出する」ということばかりをしている部下は、仕事ができる人材とは言えません。
もちろん、わざとやっているなら悪質ですが、とても素直で、何の悪意もなくそうなってしまっている人もいます。
そういう人は、人柄がどんなに良くても上司らからの評価も低くなってしまい、やはり組織の中で「孤立」してしまう可能性があります。
さらにこの話は、「上司」や「部下」だけでなく、「同僚」という立場の人でも同じです。
みんなで「チーム」となって1つのプロジェクトをやろうとしているのに、1人だけ「お前らの言っていることは間違っている、俺の言うことが正しい」という主張を頑(かたく)なに崩さない人は、やはり「見えないところを見る力」が弱いと言えます。
自分から「日本」が見えるからと言って、チームのみんなが「日本」を見ているわけではありません。(これは前回の話ですね。)
そして、チームのみんながいくら「ブラジルが見える」と主張しても、この同僚が「ブラジルなんか見えない」という主張を譲らなければ、議論は平行線のままです。
「見えないところを見る力」を持たない人は、同僚であっても、いつしか組織から「孤立」してしまうものです。
お客様や取引先などの社外の人も同じことです。
「見えないところを見る力」が弱い人は、人から嫌われたり、遠ざかられたりして、自分自身を「孤立した状態」に追いやってしまうのです。
では、これを読んでいるあなた自身が、もし「見えないところを見る力」が弱かったとしたら・・・?
自分では気づかないうちに、人から嫌われたり、遠ざかられたりして、自分自身を「孤立した状態」に追いやってしまっているかもしれません。
そうならないための方策の1つが、「見えないところを見る力を鍛える」ということなのです。
前回も書きましたが、「見えないところを見る力」というのは、
( 情報量 & 知識量 ) × ( 思考力 & 想像力 )
というかけ算によって求められます。
(う~ん、前回は「足し算」と書いたけど、まあ、それはさておき。。。)
「見えないところを見る力」は、「情報量 & 知識量」だけあっても足りず、「思考力 & 想像力」だけあっても足りません。
この両方が高まり合ってはじめて「見えないところを見る力」が鍛えられるのです。
そして、「見えないところを見る力」が鍛えられている人は、「相手の気持ち」を察しながら話を進めることができます。
このことこそ、「話し上手」になるための大原則と言えるのではないでしょうか。
さて、次回は、「見えないところを見る力」が鍛えられた人は、どのような話し方をするのか、さらに具体的に考えてみましょう。
どうぞお楽しみに!
<続く>