日本人が英単語を覚えようとする時、当然、「日本語」に置き換えて覚えることでしょう。

しかし、単に「日本語」に置き換えてしまうと、その英単語の「本来の意味」が失われてしまうことがあります。

英単語の「本来の意味」がよく見えるような日本語に訳しておくと、実際に英語で文を作ろうとする時にとても役に立ちます。

さて、今日は「Do me a favor.」という表現について考えてみましょう。

多くの辞書では、「お願いがあるの。」のように解釈されています。

しかし、そうなると、「favor」が一体どういう意味になるのかが分からなくなりませんでしょうか?

「Do me a favor.」という表現が、どうして「お願いがあるの。」のような意味になるのでしょうか?

 

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まず、「favor」というのはどのような意味の言葉でしょうか?

「favor」を「英英辞典」で調べてみると、次のような説明を見つけました。

favor:
an act of kindness beyond what is due or usual

ふむ、これはとても分かりやすい解釈です。

つまり、「favor」というのは、「義務があるわけでもなく、普段やっているようなことでもないけれど、親切心から生じるおこない」ということになります。

人に対して、「義務」もなく、「必要」もないけれど、相手のことを思いやって、自発的におこなう行為のことを「favor」と言うのです。

言い換えるならば「気を利かせた親切な行為」ということになります。

「favor」という名詞は、「do」という一般動詞と一緒に使われることがよくあります。

今回のテーマの「Do me a favor.」もそうですが、こういう場合の「do」は、後ろに「人+a favor」という形を伴います。

この場合の「do」は「第4文型」を作っていると言えます。

「第4文型」というのは、「述語動詞」の後ろに「人を表す目的語」と「モノを表す目的語」を2つ並べるような文型のことです。

第4文型の文は、たいてい「人にモノをあげる」あるいは「人にモノを渡す」という意味となります。

そうなると、「do+人+a favor」という表現は「人にfavorというものを(して)あげる」という解釈が、本来の解釈に近いものと言えそうです。

もう少し平たい日本語にすると、「do+人+ a favor」は「気を利かせた親切な行為を人にしてあげる」ということになります。

「Do me a favor.」は「人」の部分に「me(私)」が入った「命令文」です。

つまり、「あなたの方から自発的に気を利かせて、私に親切な行為をしてくれ。」という意味になるわけです。

なんだかずいぶん横柄な言い方ではないか、と思った人もいるかもしれませんが、英語の感覚では、これはさほど横柄な感じには響きません。

「そういうことをやってほしい」と伝えているだけで、具体的に「何をしてほしい」とはまだ言っていません。

「具体的にこれをしてほしい」ということをいきなり切り出す前に、相手の「意志」を確認する意味で、「Do me a favor.」という表現が使われるのです。

「Do me a favor.」と言っても良い相手というのは、たいてい、気心がしれた相手です。

お互い、そういうことを言い合っても大丈夫なような間柄なのです。

たいてい相手からは「Sure!」とか「OK.」といった返答がくるはずと分かっていて、そう尋ねるのです。

なので、日本語でいう「お願いがあるの。」という表現が、実は一番ピッタリなわけです。

ただし、そういう日本語として覚えるのではなく、「favor」という言葉があくまでも「気を利かせた親切な行為」という意味なのだ、ということを理解しておくことがとても大事です。

このことを理解しておくと、「Don’t do any favors.」という「否定命令文」をどのように解釈すべきかも分かってきます。

「Don’t do any favors.」というのは、要するに「気を利かせた親切な行為を、一切やらないでくれ。」ということになります。

つまり、「余計な気を使うな」とか「必要もないことをするな」というような意味になるわけです。

 

◎まとめ

「favor」は本来「気を利かせた親切な行為」という意味の言葉です。「Do me a favor.」「あなたの方から自発的に気を利かせて、私に親切な行為をしてくれ。」という意味であり、これがひいては日本語の「お願いがあるの。」という意味になったと考えると良いでしょう。