「見る」は、前回ご紹介した「see」「look」「watch」の他には、英語では「gaze」「glance」「stare」「glimpse」「take a look」などのように表現されます。
「gaze」「glance」「stare」は、「look」と同じように「目を向ける」とい意味の自動詞です。このため、いずれも「1点」を表す前置詞「at」などを後ろに伴います。しかし、この3つはそれぞれ、目の向け方が異なります。
「gaze」は、「1点」を軸にし、その視点を動かさずにじっと見つめる場合に使われ、日本語では「凝視する」や「じっと見る」などとなります。「gaze」には「人に不快感を与える」というイメージはなく、逆に「好意」や「尊敬」すら感じさせることもあります。
「glance」は、一瞬、ある「1点」に視点を動かしてから、すぐにまた元の視点に戻すような場合に使われ、日本語では「ちらっと見る」や「一瞥(いちべつ)する」などとなります。簡単に言えば、「look」が短い時間だけ行われた場合に「glance」が使われるということです。
「stare」は、「1点」を軸にしながらも、その視点の付近を上下左右に動かしながら「疑問」や「興味」を持って見る場合に使われます。日本語では「じろじろ見る」や「舐めるように見る」となります。「stare」を人に対して行うと、「怒り」や「非難」などの負の感情が含められるため、「stare」をされた人はたいてい「不快感」を覚えます。
「glimpse」は、「look」ではなく、「see」が一瞬だけ行われたという場合に使われます。つまり、「(1点に)目を向ける」というよりも、「目で見て認識する」とか「目に見える」ということを短い時間だけ行うという場合に「glimpse」が使われるのです。「look」が短い時間の場合は「glance」が使われるのに対し、「see」が短い時間の場合は「glimpse」が使われる、というように理解しておけば良いでしょう。
「take a look」という表現は、「look」という語を「名詞」として使用したものです。「take」という動詞は、「目の前にあるものや差し出されたものを「自らの意志で手を伸ばして取る」という意味の言葉です。また名詞としての「look」は「目を向けること」という意味となります。「look」は「そのまま視線を動かせば見える」という場合に使われますが、「take a look」の場合は、視線を動かすだけでは見えず、自分から見えるところまで動いたり、視界を遮っているモノを動かしたりして、「わざわざ目を向ける」という場合に使われます。
例えば、「Look at this picture.」という文では、視界のどこかに既に「写真」が見えており、あとは視線を動かせば良いということが暗に示されます。しかし、「Take a look at this picture.」という文では、その「写真」は文の発信者がまだ手に持っていたり、本に挟まっていたり、封筒の中に入っていたりして、文の受信者が自らの意志でその写真に手を伸ばしてみないと見えない状況であるということが暗に示されます。あるいは、仮にすぐに見える位置にある写真を指して「Take a look at…」と言っているのだとしても、それでも「自らの意志でわざわざ目を向ける」ということがほのめかされるのです。