英語では、「ゲリラ」は「guerrilla」あるいは「guerilla」と書かれ、「ゴリラ」は「gorilla」と書かれます。
このように「スペル」は異なりますが、これらの「発音記号」は同じ、[gərílə]となります。
「ゲリラ」と「ゴリラ」が、英語では「同じ発音記号」になる、ということを意外に思う人も多いかもしれませんが、今回お話したいのはそのことではありません。
結論から言うと、「ゲリラ」と「ゴリラ」は、英語での発音記号は同じですが、「発音の仕方は異なる」のです。
今回は、前回のブログ記事(2013年8月15日)では書き切れなかった、「実際の発音の仕方」について書きます。
まず、「ゲリラ(guerrilla/guerilla)」と「ゴリラ(gorilla)」の2つを辞書で調べてみると、「音節の区切り目」に微妙な違いがあることに気がつきます。
「音節の区切り目」というのは、「中辞典」くらいのサイズの英和辞典ならばたいてい載っているはずです。
例えば、「ゲリラ」の意の「guerrilla」を辞書で調べると、「guer・ril・la」のように、「・」によって区切られていることが分かると思います。
この「・」の記号こそが「音節の区切り目」であり、この区切り目によって、その単語が「いくつの音節に分かれているのか」が分かるのです。
「guer・ril・la」の場合は「3つ」に分かれているので、この単語には「3つの音節がある」ということになります。
「音節の区切り目」は、なかなか難しく、どこで区切れるのかは、辞書で確認しないと分からないケースが多々あります。
今度は「ゴリラ」の意の「gorilla」を辞書で調べてみると、「go・ril・la」のようになっています。
「音節の区切り目」というものが、「発音記号の区切り方」と合致していないこともあるのですが、「guerrilla(ゲリラ)」と「gorilla(ゴリラ)」では、「最初の音節の区切り目」が異なることに気がつきます。
「guer・ril・la(ゲリラ)」は、最初の音節は「guer」までですが、
「go・ril・la(ゴリラ)」は、最初の音節は「go」までです。
つまり、「ゲリラ」の方は、最初に「r」の部分までを含んでいるのに対し、「ゴリラ」の方は「r」は含まれていないのです。
このことを発音に当てはめて考えてみると、発音記号の[gərílə]の区切り目についても2通りの考え方があり得ることになります。
1つは、[gər・ílə]という区切り方、そしてもう1つは[gə・rílə]という区切り方です。(「・」の位置が微妙に異なります。)
実は、英語の発音記号の中には、[ə]というものの他に[ər]という記号も存在します。
[ər]という記号は、単語の語尾が「-er」となっている場合によく使われるもので、[ə:r]という記号と同じような発音であり、ただし、[ə:r]よりも弱い発音です。
[ə:r]と[ər]は、どちらもカタカナで書くなら「アー」となるのですが、どちらも「こもった音」となります。
[gər・ílə]という区切り方の場合は、最初に[gər]という記号になるため、ここはこもった音で「ガー」と発音することになります。そして、「ガー」のこもった音から[i]につながることで、「ガーリ」のような感じの音となります。
一方、[gə・rílə]という区切り方の場合には、[ə]という記号が見えます。
[ə]という記号は、これに対応している文字を「ローマ字読み」に置き換え、それを弱くした音で発音すると良いのです。
そうなると、「gorilla」というスペルのうち、最初の[gə]に対応している文字は「go」となりますので、ここは「ゴ」を弱く発音すれば良いということになります。そうなると、「gorilla」の場合は、最初の「gori」の部分で「ゴリ」という感じの音となります。
というわけで、「ゲリラ」の意の「guerrilla」は「ガーリラ」という感じになり、「ゴリラ」の意の「gorilla」は「ゴリラ」という感じになります。(ただしどちらも「リ」の部分にアクセントが置かれます。)
ところが、さらに別の発音の解釈があります。
「ゲリラ」の意の「guerrilla」については、最初の「gue」という部分の発音が、「ゲ」という感じに読めるという解釈もあり得るのです。
「gue」で始まる単語といえば、「guest」や「guess」といった言葉がありますが、これらは「gue」の部分は[ge]という発音記号となっています。
英語圏ネイティブの中には、「gue」という文字から始まる言葉は、「u」の文字を無視して「ゲ」のような感じに発音するのが自然である、という感覚を持っている人が少なからずいるだろうと思います。
そうすると、「ゲリラ」の意の「guerrilla」は、最初をこもった「ガー」で始めるのではなく、[gə]という記号を「ge」という文字に置き換え、つまりは「ゲ」のような音にして発音する、ということも考えられます。
実際、ジーニアス英和辞典(第5版)では、「guerrilla」の発音のところに、「★gorillaと区別するために[gerílə]と発音することもある」といった注意書きがあります。
というわけで、まとめると、以下のようになります。
◆「guerrilla(ゲリラの意)」→「ガーリラ(ガーはこもった音)」あるいは「ゲリラ」に近い音。
◆「gorilla(ゴリラの意)」→「ゴリラ」に近い音。
(※いずれも「ri」の部分にアクセントが置かれる。)
要するに、「発音記号が同じならば、実際の発音の仕方も同じになる」とは限らない、ということです。
「ゲリラ」と「ゴリラ」のように、発音記号は同じでも、スペルや音節の区切り目などから、異なる発音として扱われるケースはあるのです。
<おしまい>