2日連続ですが、「自動詞と他動詞」の続き、書きますね。
そもそも、学校や文法書の説明として、「目的語をとるかとらないか」で自動詞と他動詞を区別するというところに「異議あり」としてこのテーマは始まりました。
「とる」という言葉の説明もなく、当たり前のように「この動詞は目的語をとる」のように表現することが果たして良いのかどうか。
また「とる」を「必要とする」と置き換えたとしても、「省略される場合がある」のに「必要とする」と表現してしまうことで混乱を招くことにならないか。
こういったところから、「自動詞と他動詞」を混同してしまう英語学習者が量産されていくのではないでしょうか。
しかも、日本語と英語では、自動詞と他動詞の区別の仕方が異なります。
まず、日本語の文法において、自動詞と他動詞を区別するには、「目的語をとるかとらないか」ではなく、「目的語と必要とするか必要としないか」でもなく、次のように定義すべきです。
『目的語をつけて言うことが「可能」な動詞が他動詞で、目的語をつけて言うことが「不可能」な動詞が自動詞だよ。』
「可能か不可能か」。
この観点で考えていけば、自動詞と他動詞の区別は簡単です。
ではここで、昨日の問題の答え合わせといきましょう。
以下の日本語の動詞が、「自動詞」なのか「他動詞」なのか、当てて下さい。
1. 来る → 自動詞(目的語をつけて言うことができないから。)
2. 寝る → 自動詞(目的語をつけて言うことができないから。)
3. 叫ぶ → 他動詞(「人の名前を叫ぶ」など、目的語をつけて言うことが可能だから。)
4. 振る → 他動詞(「箱を振る」など、目的語をつけて言うことが可能だから)
5. 喜ぶ → 自動詞(目的語をつけて言うことができないから。)
6. 塗る → 他動詞(「うるしを塗る」など、目的語をつけて言うことが可能だから)
7. 交わす → 他動詞(「約束を交わす」など、目的語をつけて言うことが可能だから)
8. 出す → 他動詞(「ハトを出す」など、目的語をつけて言うことが可能だから)
9. 消える → 自動詞(目的語をつけて言うことができないから。)
さあ、いかがでしたか?
「目的語」、つまり「動作が行われるもの(やられる側)」に当たる言葉をつけることが可能か不可能か、という観点で見ていけば良いのですね。
日本語の場合は、1つの動詞に対して、たいていは自動詞か他動詞の「どちらか」に決まることがほとんどです。
ただし、稀に「意味の違い」によって、同じ動詞でも、自動詞になったり他動詞になったりするものもあります。
例えば、「吹く」という言葉は、「風などが吹く」という意味では「自動詞」と言えますが、「口笛を吹く」とか「トランペットを吹く」などという意味の場合には「他動詞」と言えます。
しかし、日本語のほとんどの動詞は、自動詞か他動詞の、どちらかひとつに決定することの方が多いと覚えておいてほぼ差し支えないでしょう。
そしてもう1つ、日本語の文法における自動詞と他動詞の区別の仕方として興味深いのは、自動詞と他動詞とで「形が異なる」という点です。
たいていの日本語の自動詞は、形を変化させることで他動詞に変えることができますし、またその逆もあります。
例えば、「来る」という言葉は、「目的語(動作が行われるもの)」をつけて言うことができません。
しかし、無理矢理、目的語をつけて言おうとするなら、「来させる」という表現ならばあり得ます。
もちろん「来させる」は一つの動詞ではありません。
「来る+させる」という2つの言葉が合体したものです。
「~させる」という言葉を自動詞にくっつければ、たいていは他動詞となります。
あるいは、「~させる」という言葉をつけなくても、動詞単独の変化によって自動詞から他動詞に変えることができる場合もあります。
例えば「浮く」は自動詞ですが、これを変化させて「浮かべる」とすれば他動詞として機能します。
他にも「閉まる(自動詞)→閉める(他動詞)」「立つ(自動詞)→立てる(他動詞)」「映る(自動詞)→映す(他動詞)」「当たる(自動詞)→当てる(他動詞)」など、「形が変わる」ことによって自動詞だったものが他動詞の働きをする動詞があります。
このように考えていくと、日本語の文法においては、「自動詞と他動詞」は「形」によって区別されていると言えます。
私たちネイティブ日本人は、動詞の「形」を見ることによって、目的語をつけて言うことができるのかどうかを判断することができ、そのことによって自動詞か他動詞かを判別することができるのです。
ところが、英語は違います。
英語の文法における「自動詞と他動詞」の区別では、「形」はほとんど何の意味も成しません。
例えば「sleep」という動詞が自動詞なのか他動詞なのか、この動詞の「形」からは判断できません。
『えっ? 「sleep」は自動詞でしょ?』と思った方、あまい!
一体どういうことなのでしょうか?
また長くなったので、続きは次回へ持ち越しです!
どうぞお楽しみに!
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