昨日のブログ記事で、「s」の発音に関して書きました。
「英語の発音の中で一番美しい音は何ですか?」と聞かれたら、私は迷わず「s」の音だと答えます。
これはもちろん私個人の「主観」です。
なぜそう思うかと言うと、私にそう思わせる1つのエピソードがあるからです。
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あれは、私がまだアメリカに行く前のことでした。
私は高校2年生の夏から翌年の夏まで、アメリカのオハイオ州に語学留学に行きました。
当時の私が知る限り、アメリカに留学するためには「留学」を扱っている団体に申し込まなくてはなりませんでした。
高校1年生の秋頃、高校の英語科の先生からいくつかの留学団体のパンフレットをもらい、さっそくそのうちの1つに申し込みました。
するとその団体から「代々木で説明会をやります」との返事がきました。
説明会に参加するため、私は土曜日の放課後、北松戸から代々木上原まで、延々と地下鉄千代田線に乗って目的地を目指しました。
たぶん、千代田線でこれだけ長い距離、しかもたった1人で乗っていたのは初めてだったと思います。
とても、とても長く、感じられました。
目的地に到着し、説明会会場に入ると、私以外に、もう2人の高校生(らしき学生)が座っていました。
私は1人でしたが、その2人は母親を連れてきていました。
「なんだ、親も参加するんだったの?」
などと思いつつ、まあ、いいやとのんきに構えていました(笑)
説明会が始まり、担当者がいろいろと話を進めていきます。
そして、途中まで説明が進んだところで、担当者が次のように言いました。
「ここから先は、私達の現地のスタッフから説明させて頂きます。」
そう言うと、一人の女性が部屋の中に入ってきました。
私は、何の身構えもなく、普通にその人に目を向けていました。
ところが!
その「現地スタッフ」という女性は、いきなり流ちょうな「英語」で話し始めたのです。
しかし、見た目はどうみても「日本人」そのもの。
日本人の顔なのに、日本人の風貌なのに、その口からはとてもキレイな「北米英語」の音が流れ出てきたのです。
当時の私は、アメリカに行く前だったこともありますが、それほど英語力もなく、その人が話す英語の内容を理解することはほとんどできませんでした。
内容は分からなかったのですが、とにかく、その人の発音の美しさに度肝を抜かれたのです。
最初は「うわ、きれいな英語だな~」と聞き惚れるだけでしたが、そのうち、1つの疑問がわいてきました。
「同じ日本人のような風貌なのに、どうしてこの人の英語は日本人のような発音ではないのだろう?」
同じ人間でありながら、どうしてこうも「発音」が違って聞こえるのか?
私は説明の内容そっちのけで、「何」が彼女の発音を「ネイティブらしい発音」にしているのか、その違いを探すことに必死になっていました。
そして、気づいたのです。
「あぁ、この人は “s” の音をすごくたくさん出しているんだ!」
部屋中に聞こえる彼女の「s」の音。
空気が空気を切り裂くような、心地よい周波数の音。
その「s」の音が、彼女の発音の至る所に現れていて、その音が彼女の発音を「ネイティブらしい発音」たらしめていたのでした。
少なくとも、私にはそう思えました。
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以来、私の中では、「s」の音をキレイに、たっぷりと出すことこそが、キレイな英語の発音に通じるのだという思いが、今も変わらずにあります。
「s」のキレイな音。
生徒の音読を聞いていて、この「s」の音がキレイでないと、「英語の音として物足りない」と感じてしまいます。
恐らく、ネイティブも同じように感じることでしょう。
皆さんも、映画や海外ドラマなどを見ながら、是非「s」の音を意識して聞いてみて下さい。