<前回の続き>
(「心の健康を損なわないために」の記事一覧はこちら。)
前回、心の健康を損なわないためには「バランス感覚を鍛えるべきだ」と書きました。
私の知り合いで鬱(うつ)病を患ってしまった人がいるのですが、その人がこんなことを言っていました。
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自分と同じように精神的に病んでしまった人達と話をしていると、話がかみ合わなくてとても疲れることがある。
それは、みんなそれぞれ異様なほど、価値観の偏(かたよ)りがあるからなんだ。
ものすごく偏っているから、どうしてもかみ合わない。
自分の主張を誰も譲らなくて、会話していて喧嘩になることもある。
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「考え方に大きな偏りがある」ということが原因で、自分自身をうまくコントロールできなくなっている人は意外に多いかもしれません。
バランスを取るためには、「複数の点」が必要です。
複数の点を「同時に見据える」ということができなければ、バランスを取ることはできません。
人にはそれぞれ「主観」というものがあって、人によって主観は異なります。
人が10人集まれば、10通りとまでいかなくても、考え方や価値観はいくつかに分かれることでしょう。
主観というものは、その本人にとっては「現実に見えているもの」であり、多くの場合は「揺るぎない事実」です。
ところが、同じ現象を10人が観察すると、「揺るぎない事実」が何通りかに分かれてしまうのです。
「自分が見えている真実」というものとは異なる真実を、隣の誰かさんは見ているのかもしれないのです。
自分の「主観」だけを見つめ、それ以外の見方を否定していると、どうしても「複数の点」を同時に見据えることはできません。
しかし、自分の主観によってみえる自分だけの真実を見つめながら、同時に「隣の誰かさんの異なる真実も信じる」となると、たいてい、そこには「矛盾」が生じます。
私の見ているものも真実。
隣のAさんが見ているものも真実。
さらに隣のBが見ているものも真実。
異なる見方のそれぞれ全てが「真実」だということなどあり得るでしょうか?
大事なことは「どの人の見方が正しいか」ということではありません。
「どの人にとっても、その人自身が見ているモノは常に真実になってしまっている」ということを受け入れなくてはならないのです。
例えば、室温18度の部屋に10人の人がいたとして、「寒い」か「暑い」かを尋ねた時に、その感じ方は人それぞれでしょう。
「寒い」という人もいれば、「暑い」という人もいる。
また、同じ「寒い」と言った人達の中でも、「すごく寒い」という人もいれば、「ちょっと寒い」という人もいる。
その人にとっては、その感じ方は「真実」なのであり、それを他人が「いや、寒いわけないだろう」と言っても無駄なのです。
1つの事柄を観察し、まずは「自分の主観」を通じて見えたものが、「自分にとっては真実」となります。
その時に、いくら「矛盾」が生じようとも、「隣の誰かさんが別の主張をしたが、それはそれで、その人にとっては真実なのだ」ということを受け入れてみる。
そうすると、「自分から見える点」とは別の点が見えてきます。
そして、複数の点を同時に見据えるということができれば、ようやくバランスを取るためのお膳立てができます。
あとは、どこでバランスを取れば良いのか、ということを探っていかなくてはなりませんが、複数の点を同時に見据えることができていれば、バランスというものはきっと取れるようになります。
「バランスが大事」というのはよく聞く話ですが、その裏には、「自分の考え方とは矛盾する考え方を受け入れる」ということが大事です。
「矛盾」を嫌う人ほど、バランスを取るのがうまくできません。
心の健康を損なわないためにも、「矛盾を受け入れる」という努力をしてみると良いと思います。
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