英語などの「苦手なこと」を克服するにはどうしたら良いかを考えていくこのコーナー。

前回まで、色々な観点から考察してみました。
(前回までのテーマ記事一覧はこちら。)

今回は、「観察するポイント」ということについて考えてみましょう。

私はサラリーマン時代(23~28歳)の頃から、「仕事ができるようになる人」と「仕事がなかなかできるようにならない人」の間には、どんな違いがあるのだろうか、ということをずっと考えています。

それは、大人を相手に英語を教えるようになった今でも続いています。

仕事だけでなく、「できるようになる人」と「できるようにならない人」には、何かしらの「共通点」のようなものがあるのではないか、とずっと考え続けているのです。

そして、今年に入り、ある1つのキーワードを見つけました。

それは、「観察するポイント」というものです。

人が何かを観察する時、そこには「観察するポイント」というものがあります。

そして、そのポイントは、1つの事柄につき、常に1つだけではなく、必ず「2つ以上」あるはずです。

例えば、自分が車を運転していて、突然、目の前に別の車が割り込んできたとします。

とても危ない運転です。普通はこちらが「イラッ」と感じてしまう行為です。

しかし、その出来事について、色々な角度から考えていくことができます。

・相手は、危険というものに対する意識が低いのかもしれない。→自分はマネしないようにしよう。

・相手は、事故を起こしても構わないような切羽詰まった状態にいたのかもしれない。

・相手は、不慣れなドライバー(初心者や高齢者など)なのかもしれない。

・道路上には、このような運転をする人は必ずいるものだ、と改めて気持ちをひきしめよう。

・そもそも、自分が中途半端な車間の空け方をしていたのが悪かったのかもしれない。もう少し車間を空けた方が良いかもしれない。あるいは、安全を保ったままもう少し車間をつめても良いかもしれない。

・自分が相手の車をよく見ていてよかった。今後も前方にはよく注意しよう。

このように「観察するポイント」にはいくつもあり、人によって捉えるポイントは違っていますね。

ところが、単に「ポイントが違っている」だけではなく、人によって、観察するポイントの「数」もまた違っていると言えます。

観察するポイントの「数」が多い人は、それだけ正しく、深く物事を観察することができますが、逆に観察するポイントの「数」が少ない人は、その分不正確で、浅い観察しかできません。

私は、人の成長というものについて考察していくうちに、「観察するポイントの数」の「多少(多いか少ないか)」というものが、「できるようになる」か「できるようにならない」かを分けているのではないか、ということに思い当たったのです。

観察するポイントをたくさん見つけることができる人は、次のようなことができます。

1. 誰かが発言したことの意味をあらゆる角度から観察できるため、たとえ自分の価値観とは違っていても、その発言の真意を理解し、正しく解釈することができる。

2. 自分が発言したことの意味を相手がどのように理解し、解釈していくか、ということをあらゆる角度から観察できるため、たいてい誰にでもこちらの発言の真意を伝えることができる。

3. 誰もが難しいと感じるような問題を目の前にしても、あらゆる角度から観察できるため、誰もまだ気づいていないような「原因」を探ることができたり、またそのための「解決策」を思いつくことができたりする。

4. 自分の身体のコントロールが要求されるような事柄(スポーツ、楽器演奏、創作活動など)を実践する際、「お手本」となるものをあらゆる角度から観察することができるので、いち早く「コツ」を見つけることができる。同時に、自分自身をあらゆる角度から観察することができるので、人よりも早くそのことを身につけていくことができる。

他にもあるかもしれません。

「観察するポイント」をたくさん見つけられるということが、その人を「できる人」へと育ててくれるのです。

逆に言えば、「観察するポイント」をあまり多く見つけられない人は、単純な努力を繰り返していても、なかなか「できる人」にはならなかったりします。

努力が空回りして「成長」へとつながらない。

こんな悲しいことって、あるでしょうか?

一生懸命努力しているのに、そのことが自分の「実」にならないなんて!

英語を教えていると、「努力をしているのに実にならない」という状況に陥っている人をたくさん見かけます。

本人も苦しいでしょうが、見ているこちら、指導すべき立場にあるこちらも苦しいのです。

どうにかして、「努力が実る」という好循環に持って行きたいと切実に感じます。

そのためには、努力をしている当事者自身が「観察するポイント」をなんとかして、増やしていかなくてはならないのだ、と思うのです。

では、「観察するポイント」を増やすためには、何をどうすれば良いのでしょうか?

次回はそのあたりに焦点を当てて考察してみましょう。
どうぞお楽しみに!

<続く>