今週もやってまいりました、英語学習者ならば「暗唱」をやりましょう、とオウムのように繰り返すコーナー!

前回は、一度暗唱ができるようになっても、すぐに口が重くなってしまうので、何度も繰り返す必要がある、ということを書きました。

では、暗唱はどこまでやるべきでしょうか?

これについては、私(久末)の経験を交えてお話ししていきたいと思います。

私が人生で初めて本格的に英文の暗唱に取り組んだのは、大学生1年生の頃でした。

その時に使用したテキストは「若草物語」という本でした。

全部で30ページほどありましたが、まずは最初の「5ページ」のみを練習しました。

お手本となるカセットテープがあったので、ネイティブの音声を何度も繰り返し聞きました。

そのカセットテープを最初に聞いた時の感想は、「うわ~、はえぇ!」でした(笑)

とても同じように発音して言える自信はありませんでしたが、とにかく、塾講師の仕事としてやらなくてはならなかったのです。

意味の分からない単語を辞書で確認して文の意味を捉え、

正しく読めるように発音記号も調べ、

発音しづらい所をカセットテープで何度も繰り返し確認し、

そして、何度も繰り返し発音して練習しました。

口がスラスラになってきて、しばらくすると、そのうち、文字を見ないでも言えるようになりました。

「文字を見ないで言えるようになる」というのが、つまりは「1回目の暗記の完成」です。

しかし、人間、何事であっても「1回で身につく」ということはありません。

1回目の暗記を終えた後も、私は何度も何度も繰り返し「音読と暗唱」を繰り返しました。

たぶん、時間にして、軽く2~3時間はかかったと思います。

この日(初日)はこんなところでやめておくか、という感じで終えました。

そして、翌日。

一晩寝て起きて、もう忘れてしまっているのではないかという不安がありましたが、試しに文字を見ないで暗唱してみたら、そこそこできました。

でも、やっぱり「そこそこ」の完成度でしたので、ところどころは単語が抜けていたり、単語が間違っていたり、あるいは文章が丸々1つ抜けてしまったり、中途半端な感じでした。

そこで、再び「文字を見ながら言う」という音読をしばらく繰り返しました。

初日ほどの時間はかからず、何度か繰り返して言っているうちに、また完全になりました。

そして、さらに翌日、3日目の朝。

朝起きて、「言えるかな?」と思って暗唱してみると、2日目よりもきちんと言えています。

不完全だったところもあったので、また「音読」で再確認し、再び完全なものにしました。

そういうことを繰り返しながら、忘れてはならないのは「聞く」ということです。

お手本となる音を聞き続けていないと、「自分では完璧」と思っていたものが少しずつズレて来てしまうのです。

聞くときは「文字を目で追いながら聞く」のと「文字を見ないで聞く」のを半分ずつやりました。

そうやって、「聞く」「読む」「暗唱する」というのを1週間も続けていると、もうほとんど間違えないくらいになりました。

たぶん、ここまでくれば、暗記の完成度は90%を超えてくると思います。

ところが、私はここでもまだやめませんでした。

若草物語の最初の5ページを、同じ箇所をその後もずっと繰り返したのです。

完成度「90%」の暗唱というのは、人が聞けば「完璧」と思えるようなものかもしれません。

ですが、暗唱をしている本人は、「ちょっと気を抜くと間違える」という部分が含まれているというレベルです。

それは「発音を間違える」のか「単語を間違える」のか「文を間違える」のか、どれかは分かりません。

ただ、少なくとも「口が勝手に次々と正しい英語の音を出す」という感じにまでは到達していないという感じです。

「気を抜くと間違える」

そういうレベルのうちは、まだ完成度は「90%」程度と言えるでしょう。

そういう意味では、初日に完成した暗唱というものは、まあせいぜい「60%」程度、良くて「70%」程度といったところです。

とは言え、全く読んだこともなかった英文を「暗唱する」というところまで達成するのに、かなりの努力が必要です。

「0%」から「70%」になるまでが、まずは大変です。

ところが、「70%」から「90%」は、割と簡単にいきます。私の例で言えば、2日目と3日目です。

問題なのはその後です。

「90%」というレベルで終えてしまうと、きっと時間が経つにつれて薄れていき、そのうち忘れてしまうでしょう。

本当にやるべきはその後。

「90%」から「99%」まで高めるのです。

「90%」で終えるのではなく、「99%」まで高めていくと、かなり時間が経った後でも、後々まで深く、自分の中に残ります。

大事なことは、この最後の10%、つまり「最後の1割」です。

ところが、「90%」から「99%」までに高めるのは楽ではありません。

「0%から70%まで高めた」時に比べればマシ、と思うかもしれませんが、意外にそうではないのです。

「90%→99%」を達成するには、「0%→70%」の時にかけたエネルギーと同じくらいか、あるいはそれ以上のエネルギーが必要となります。

最後の1割というものは、どんなことでもしんどいものです。

多くの人は、「90%できていれば十分、ここでやめよう」と思ってしまうかもしれません。

「90%」からさらに上を目指すには、どうしても「細かい部分」に注意を払わなくてはなりません。

だから、90%までできていれば、たいていの人はそこで満足してしまうのです。

でも、そこでやめてしまうのはもったいない!

「0」だったものを「90%」まで高めたのならば、それを無くしてしまわないために、最後の詰めとして「99%」まで高めましょう。

より細かく、より丁寧に、より正確に。

90%に到達するまでにかかった時間以上の時間がかかるかもしれません。

それでも、そこまで到達した人間だけが見える世界があります。

そこまでやる価値はあるのです。

特に、生まれて初めて「英文の暗唱」に挑戦する人は、まず最初のテキストは99%まで高めてみてください。

99%まで高めたものが1つあるだけで、その後の英語学習が全然違ってくるのです。

私が今も英語力を維持できているのも、実は、「若草物語の最初の5ページ」のおかげなのです。

あれから20年以上経った今も、私はいきなり何も見ずに暗唱することができます。

その後も