人はたいてい誰でも「話し上手」になりたいと願っているのではないでしょうか。

わざわざ「話し下手」になりたい、と思う人は、あまりいないでしょう。

「話し上手」と言われる人達が共通に持っているだろう「ルール」について、あれこれと探っていこうというこのコーナー。

前回は「似ている表現で繰り返そう」という内容で考察してみました。(前回記事はこちら。)

1つのことを人に伝えるのに、「1回だけ」で伝えようとするのではなく、「少し違った表現」を使って「何回か繰り返す」ということをやると良いですよ、という話でしたね。

今日はその続きです。

「似ている表現で繰り返す」ということを実践してみようと思っても、なかなか上手くいかない人もいることでしょう。

そういうことが上手くいかない理由は、日頃からそういうことを実践していないからです。

では、どうして日頃からそういうことを実践していないのでしょうか。

それは、ズバリ言えば、「弱者に対する優しさが足りない」ということなのかもしれません

「優しさが足りない」などと言われるとムッとする人もいることでしょう。

でも、1つのことを伝える時に「1度だけ言えば良い」と思ってしまう人は、決して優しいとは言えません。

特に、相手が自分よりも弱い立場だったり、理解力や思考力が弱かったとしたならなおさらです。

例えば、寒そうに震えている人がいたとします。

そこであなたは、「寒くない?」と聞いたとします。

しかし相手は、「ううん、大丈夫。」と答えたとします。

はい、これでおしまい。

という感じで会話が終わってしまうのは、もちろん、2人の人間関係がどのようなものかにもよるでしょうが、なんとも味気ない感じがします。

「寒くない?」「大丈夫。」のやり取りで終わりにしても良いのですが、そこで「大丈夫」の意味を考えてみるような「もう一歩先の優しさ」というものをあなたが持っていたとします。

すると、本当は寒いのに、こちらに心配させたり、あるいは気を遣わせまいとして、わざと「大丈夫」と答えているのではないか、と想像することができます。

現に、相手は「寒そうに震えている」のです。

そこで、もう一言、別の言葉を投げかけてみます。

「何か暖かい飲み物でも入れようか?」

この追加の質問をすることで、相手はもしかしたら気を許してくるかもしれません。

「うん、じゃあお願い。」と言ってくるかもしれません。

でも、それでも「大丈夫」と答えてきたらどうしましょうか?

「もう、本人が大丈夫って言ってるんだから、放っておけ!」となるかもしれません。

しかし、相手は「寒そうに震えている」のです。

そこで、さらに追いかけて、次のように言ったとします。

「そこに膝掛けがあるから、好きに使ってくれて構わないよ。」

どうでしょうか?

このことを考えるために、逆の立場になったことを想像してみてください。

相手から、単に「寒くない?」と聞かれただけでは、最初は相手に遠慮して「大丈夫」と答えてしまうかもしれません。

ところが、

「寒くない?」
「何か暖かい飲み物でも入れようか?」
「そこに膝掛けがあるから、好きに使ってくれて構わないよ。」
「窓を閉めようか?」
「暖房、もう少し強くしようか?」

というように、色々な言い方で尋ねられれば、本当は震えるほど寒いのですから、どこかの時点で、「じゃあお願い。」と言い易くなるのではないでしょうか?

もちろん、本当に全然寒くなかったとしたら、追加で発せられた言葉の全てが「余計なお世話」となってしまう可能性もあります。

だからこそ、話し手は「見えないところを見る力」を発揮して、相手がどんなことをどのように感じているのか想像してみる必要があるのです。

「優しさ」が足りないから、言葉が足りない。
「優しさ」が足りないから、言葉を「別の言葉」に置き換える練習が足りない。

日頃から、優しさを持って周囲の人に接しようとする人は、1つの事柄を「いくつかの言葉」に置き換えて表現をするという「練習」をたくさんしていることになります。

ということは、「似ている表現で繰り返す」ということを実践するために意識しなくてはならないのは、相手に対する「優しさ」ということになります。

特に、人から「あなたは言葉が少ない」とか「あなたは何を考えているのかわからない」と指摘されることが多い人は、もしかしたら「優しさ」という観点で自分を見つめ直してみると思い当たる節があるかもしれませんね。

おとなしい人柄であったり、柔らかい口調であったりしても、必ずしも「優しい」人であるとは限りません。

実際、私の教室の生徒にも、一見すると「優しそうな人だな」と思える人なのに、「別の言葉に置き換えるのが苦手」という人もいます。

そういう人に「優しさが足りないのでは?」と投げかけると、「実は、自分でもそう思うんです」という意外な答えが返ってくることがあるのです。

見かけ上の優しさではなく、実際に相手の立場になって考えてあげられる優しさ。

そういう「優しさ」という感情を発揮させ、「似ている表現で繰り返す」ということをたくさん練習していけば、少しずつ自分のことを理解してもらえるようになるはずです。

もちろん、前回も書きましたが、何事も「やり過ぎ」は良くないので、そこのところだけ注意しましょう。

これを書いている私自身にも言えることと反省しつつ、「優しさ」を発揮できるような人になりたいと思います。

是非、意識してみましょう!

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