さて、昨日の続きです!(唐突な始まり)
学校の授業、あるいはネット上の書き込みなどで「修飾する」とはどういうことか様々な形で説明されています。
しかし、「修飾するとは、何をすることか」という徹底した説明は、ほとんど見当たりません。
授業を聞いている学生たち、あるいはネット上の書き込みを読んでいる英語学習者(主に初学者)たちは、もしかしら「なんとなく、分かった気がする」という程度で無理矢理先に進もうとしているのかもしれません。
「修飾する」という言葉は、文法の世界では当たり前のように出てくるのに、そのことをきちんと理解しないで英文法を学ぼうとする人がいかに多いことか。
何事も「基本的な理解」を押さえた上でないと、先に進んでから困ることになります。
さて、前回(昨日)のまとめでは、「修飾する」というのは以下のように説明することができるということでした。
『「修飾する」とは、日本語で考えた時に、ある言葉の「前」に、その状態や状況を表す別の言葉を「置くこと」である。ただし日本語以外の言語では、必ずしも「前」に置くとは限らない。』
まどろっこしい説明ですが、このことを一つ一つ紐解いていくと、そのことが結果として「修飾する」ということと同じ意味になるのです。
さて、では「修飾する」という言葉の名前に使われている「飾る」という言葉は、一体どういうところからやってきたのでしょうか?
「修飾」という言葉の由来について、少し想像してみましょう。
英語の「文の要素」には、修飾する部分を除けば、「V(述語動詞)」「S(主語)」「O(目的語)」「C(補語)」の4つがあります。
この4つの文の要素の組み合わせによって、英語のどの文もたいていは5つの文型に分類されることは皆さんもご存じでしょう。
第1文型:S+V
第2文型:S+V+C
第3文型:S+V+O
第4文型:S+V+O+O
第5文型:S+V+O+C
世界にはたくさんの文があり、今こうしている間にも世界のどこかで誰かが文を作っています。
どんなに長い文でも、どんなに難解な文でも、文である以上、上記の5つのどれかに分類されます。
文型を区別するのは上記の4つの文の要素になるわけですが、文を作る際、この4つ以外に「M:修飾部分」というものが頻繁に使われます。
修飾部分がなくても、もちろん文は完成し得ます。
ところが、ほとんどの文には、たいてい修飾部分がついてきます。
文のどこに、いくつ、どのような修飾部分が入ってこようとも、文型の分類としては、修飾部分は完全に無視され、上記の4つによってのみ分類されます。
そういう意味では、修飾部分にあたる部分、すなわち「修飾する部分」は、あたかも「文の中の飾り」のような位置づけとして解釈されても仕方がないのかもしれません。
日本語の文を最初に思い浮かべ、それから英文を作ろうとした場合(これは初級レベルの人の話ですが)、まずやるべきことは、上記の5つの文型のどれを使えば良いだろうか、ということです。
そして、日本語の文を思い浮かべてみて、その文をつくる一つ一つの言葉が「V・S・O・C」のどれに当てはまるのかを考えてみるのです。
そうした時に、この4つのどれにも当てはまらない言葉を見た時に、たいていそれらは「修飾部分」になっていると思われます。
修飾部分であるかどうかを確認するのは、まずは「V・S・O・C」に当てはまらないという「消去法」でも良いのですが、積極的に「修飾部分である」ということを確認するためには、前回お示しした「修飾する」の定義が必要となります。
例えば、次のような日本語を英文にしようとしたとしましょう。
例:彼はゆっくり私を押した。
まあ、簡単な文ですね(笑)
まずやるべきは、この文は、英語ではどのような文型で表現できるのだろうか、と考えることです。
まずは「文の結論を述べる言葉」、つまりは「述語」から探します。
当然、述語は「押した」ですし、これは動詞ですから、「押した」という言葉が英語の「述語動詞(V)」に当たります。
「押した」は、英語では「pushed」と表現できます。(「push」の過去形)
次に、「pushed(押した)」から見て、他の言葉はどのようなものかを見ていきます。
「彼」という言葉は、「押した」という動作を「おこなったもの」と言えますね。
従って、「彼」は「押した」の主語(S)ということになります。
続いて「私」という言葉。
「私」というのは、「押した」という動作から見れば、その動作が「おこなわれたもの」と言えます。
つまり、「私」は「押されたもの」と言えますね。
動作がおこなわれたものは「目的語」と呼ばれますので、「私」は「押した」の目的語となります。
さあ、残るは「ゆっくり」という言葉です。
この言葉は、一体、どういう働きをしているでしょうか?
意味を考えると、「ゆっくり」という言葉は、「押した」という動作に対して、「その状態や状況を表している言葉」ということになります。
「押した」という動作について、「ただ押した」ということではなく、その「押し方」について、動作の状況を表しているのです。
さらに、「ゆっくり」という言葉は、「押した」という言葉よりも「前」に置かれています。
「主語」でもなく「目的語」でもない、この「ゆっくり」という言葉は、そうです、動詞である「押した」を修飾しているのです。
つまり、「ゆっくり」というのは、文の要素では「修飾部分」として分類される、ということになります。
そうすると、この文は、「S+V+O」という第3文型ということになります。
文型が分かればあとは簡単。
まずは「S」と「V」と「O」に当たる語をそれぞれ英語にして並べます。
すると、
He pushed me.
となりますね。ここに修飾部分である「ゆっくり」という言葉を入れれば良いのです。
修飾部分というのは、日本語の場合と違って、必ずしも修飾される語の「前」に置かれるとは限りません。
「ゆっくり」というのは、英語では「slowly」という言葉で表現されます。
「slowly」は修飾部分なので、文のどこに置かれたとしても「文型には影響がない」のです。
実際に、あちこちに置いてみましょう。
1. Slowly he pushed me.
2. He slowly pushed me.
3. He pushed slowly me.
4. He pushed me slowly.
この中で、不自然なのは「3」だけです。
それ以外は、まあ、「1」について