<前回の続き>

電子辞書と紙の辞書を比べた時に、電子辞書の利点として、もう1つ、素晴らしい機能があることを書き忘れていました。

それは、「1台で何十冊もの辞書を掲載している」という点です。

電子辞書には「英和辞典」や「和英辞典」だけでなく、他の外国語の辞書や、日本の国語辞典なども含まれているため、1台で何十冊もの辞書として機能してくれます。

しかもそのことでトータルでは価格が安いという利点が生まれています。
(ついで言えば、持ち運びの際に、紙の辞書は重いけれど、電子辞書は比較的軽いという点も利点ですね。)

このような利点から電子辞書を愛用する人の数が増えているのは確かです。

ところが、一方で、前回挙げた「単語のスペルを覚える」という観点から言えば、面倒くさくてもいちいち頭の中で「スペルを繰り返す」ということをやらなくてはならない紙の辞書の方が良いと言えます。

紙の辞書の良い点は、それだけではありません。

紙の辞書の場合、単語を引いたら、その単語が「どのくらいの紙面(面積)を使って書かれているか」という点が、「視覚的」なイメージで一目瞭然となります。

例えば、「as」という単語を紙の辞書で引けば、この単語がいかに広い意味で使われるのか、辞書のページを何枚かめくるうちに「イメージ」としてつかむことができます。

逆に、辞書の中で、ほんの1行程度で終わってしまう単語もあります。

「parakeet」なんかは、ほんの一言二言で記載が終わっています。

このように、紙の辞書の場合は、その単語が持つ「意味の広さ」を、辞書の紙面で使われる「面積」によって、目で見てイメージをつかむことができるのです。

この「意味の広さ」をイメージでつかむということが、後になっても「深く残る」ということにつながるのです。

ところが電子辞書の場合は、いくら広い意味の語であっても、一度に目に入るのは、せいぜい「1画面分」です。

しかも、ページをめくるとは言っても、実際の紙をめくるのとは違って、「何ページにまたがっているのか」ということがイメージしづらいのです。

また、たいていの電子辞書は、「例文」や「成句」などについては「別ページ」に表示させるようにしているものが多く、その単語の本当の「意味の広さ」を視覚的にイメージすることができないのです。

さらに「例文」や「成句」が別のページにあるということは、案外、「例文」や「成句」を見つけにくいということにもつながります。

事実、私の生徒に「この単語を辞書で調べて、成句のところを探して下さい」と指示を出すと、紙の辞書を使った場合はすぐに見つかりますが、電子辞書では延々と見つからない、ということがしょっちゅう起きます。

さらに、携帯電話などについている「簡易版」の英和辞典などでは、「発音記号」が記載されていなかったり、「自動詞と他動詞」の区別、「可算名詞と不可算名詞」の区別などが記載されていなかったりする場合もあります。

そうなると、「英語をきちんと学習していく」という目的としては、いまいち使い勝手が良くないということになります。

やはりそういう意味では、「紙の辞書」というものは、まだまだ英語学習者には必要なものと言えます。

紙の辞書を使って、たくさんの単語を引くようにしていると、人間誰でも慣れるもので、そのうち「引くスピード」も早まっていきます。

前回も書きましたが、これは「電子辞書」の「単語を早く引ける」という利点を打ち消すほどかもしれません。

英語の熟練者は、例外なく「紙の辞書」を引くのが早いものです。

さて、以上により、私(久末)の結論としては、「電子辞書」も「紙の辞書」も、それぞれ一長一短があるのですから、それぞれの長所を活かしつつ、同時にそれぞれの短所をおぎなうように、結局は2つとも併用するのが良いのではないかと思います。

ただ、お金の都合などで、どちらか一方しか買えない、ということであれば、う~ん、個人的には「紙の辞書」の方に軍配が上がるように思います。

是非参考にしてみて下さい。