昨日の記事で、「人が何かを身につけるには、『意識的な学習』と『無意識の学習』の両方が必要だ」と書きました。
「意識的な学習」にも、「無意識の学習」にも、どちらも一長一短がありますので、両方をバランスよくおこなうのが、何事もうまく行く秘訣ではないかと思います。
それで、このことを英語に置き換えてみると、次のようになります。
・意識的な学習 = 文法学習、単語学習
・無意識の学習 = 英語の「音」の中に身を置く
なぜ「無意識の学習」が「音」なのか?というところで昨日は終わりました。
今日はその続き。
英語を身につけるということは、以下の4つのことができるということです。
1. 文を作るために、単語を適切に「選択する」ことができる
2. 単語を適切な形に「変化させる」ことができる
3. 単語を適切な順番に「並べる」ことができる
4. 並んだ単語によって出来上がった文を、適切な「音で発する」ことができる
もちろん、一言で「英語を身につける」と言っても、人によってイメージする「レベル」は違います。
「車の運転ができる」と言った時に、「乗り心地は最悪で、事故の危険だらけだけどかろうじて運転ができる」というレベルと、「乗り心地は申し分なく、安全、安心、スムーズな運転ができる」というレベルとでは全然違いますね。
これと同じで、「英語を身につけた」「英語ができる」と言っても、人によってレベルが全然違うのです。
しかし、レベルは違えども、「英語を身につける」「英語ができる」ということは、上記の4つの全てができる、ということを意味するはずです。
この4つのうち、「1」は単なる「語彙の知識」と言えるかもしれませんが、
「2」「3」「4」に関しては「知識」というより、何らかの「法則」が含まれているものだと言えます。
「法則」。
人が言葉を話すときは、「記憶した文を使って話す」のではなく、「言語の法則に従って文を作っていく」ということをします。
「単語の形を変える」にしても、
「単語を適切な順番に並べる」にしても、
「単語を正しく発音する」にしても、
いずれにしても、そこには「法則」があるのです。
そして、これらの法則も、「意識」と「無意識」に分けることができます。
「意識的な学習」によって獲得した法則というものは、いわゆる「文法」というものです。
英語学習の先人達がまとめてくれた「文法(=文の法則)」を使って、学習者が自分の「頭」を使って学習していくのです。
しかし、前回も書きましたが、「誰かがまとめたもの」は常に「不完全なもの」だと言えます。
「英文法」で全ての英文の法則を説明できるわけではありません。
だから「英文法」だけで英語を学んできた人が書く英文は、「英文法的には正しい」と言えるかもしれませんが、ネイティブが読めば「なんか変」と思われてしまうことがあるのです。
では、どうすれば自然な英語が身につくでしょうか?
その答えが「無意識の学習」ということになるのです。
英語に限らず、「言語」というものは、まず最初に「音」から始まりました。
まだ人類が「文字」を使うことができなかった頃から、「音」は意思疎通のための基本的な媒体だったのです。
意思疎通のために人が口から発する「音」には「意味」が含まれています。
そして、その「意味を持つ音」の中には、その言語の「法則」が全て含まれているのです。
例えば、次の英文を見比べてみてください。
A: She is a beautiful young lady.「彼女は美しくて若い女性だ。」
B: She is a young beautiful lady.「彼女は若くて美しい女性だ。」
2つは「beautiful」と「young」の順番が違っているだけですね。
よほど詳細な文法書でない限り、このような形容詞の語順については説明が書かれていません。
書かれていたとしても、「リズムや文のバランスなどによって様々である」のように説明されているのがほとんどです。
英文法だけを学習してきた人には、どちらが正しいかを判断する術がありません。
ところが、英語の「音」の中にどっぷり浸かってきた人は違います。
英語の「音」の中に含まれている「英語の全ての法則」を「無意識」に学習してきたおかげで、2つの文を読み比べて「音」にしてみた時に「違い」がはっきりと分かります。
正解を言ってしまいますが、上記の「A」と「B」では、「A」の方が自然と言えます。
試しに、「Google」を使って検索してみますと、
(A)「is a beautiful young lady」では「約 3,280,000 件」のヒットがあったのに対し、
(B)「is a young beautiful lady」では「約 57,300 件」しかヒットがありませんでした。
「B」も無視できないほどの数のヒットがありますが、それでも、「A」では2つも桁が違っています。
世界の多数派は「A」のような表現をしていると言っても過言ではありません。
つまり、「B」よりも「A」の方が「自然な表現」であると言えるのです。
しかし、Googleのようなものを使わずとも、英語の「音」に大量に触れてきた人には、「感覚」でこの違いが分かってしまいます。
「言語の音」の中に「言語の全ての法則」が含まれている、などと言うと、「全ての」という言葉に反応して「そんな言い方はないだろう」「全ての、というのは言い過ぎだ」と反論する方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、私は敢えて「全ての法則」と表現します。
そして、「法則」は「法則」だからこそ「完全に未知の言葉」にも対応することができます。
それはまるで、「y = 2x」というような一次関数があったとして、「x」にどんな数値を入れても必ず「y」が求められるようなものです。
「単語の形を変える」や「単語の並べ順を決める」などをする際、「未知の単語」であっても、「法則」を持った人間ならば、「正しい形」や「正しい順番」で表現することができるのです。
「She is a beautiful young lady.」という場合に、「beautiful」と「young」の2つにおいては「beautiful」が先になる、ということを覚えておく必要などないのです。
そんなことをいちいち「覚えていく」ということをしていては、いつまで経っても英語はできるようになりません。
意識して覚えるよりも、「無意識」の感覚で「これが正しい」と分からなければ、いざという時には使えないのです。
ちょっと長くなりましたので、ここらでいったん区切りますね。
次回は、日本語を使って、「無意識の学習」によって得られた「
法則」というものが、本当に「未知の単語」に対応できるかどうかについてご紹介します。
どうぞお楽しみに!