英語の学習には「暗唱」が有効であることを強く主張するこのコーナー。
前回は「音読」や「暗唱」などの音声学習を継続することによって、「文章を読むスピードがアップする」という効果についてご紹介しました。
(前回記事はこちら)
いくら文法をしっかり理解していて、語彙の知識も豊富であったとしても、「英語の音」による感覚が鍛えられていないことには、スピーディーに文章を読むことができません。
もちろん、英語の文章を読むためには「文法」や「語彙」の知識も当然必要です。
ですが、「文法」や「語彙」すらも、音読や暗唱などの「音声学習」を継続することでスムーズに進めることができます。
今回は、「音声学習」と「文法の理解」の関連について考えてみましょう。
普通、「音声学習」と「文法学習」は、まるで「異質」なものとして扱われます。
英語学習者の中にも、「発音」や「リスニング」などの音声面に強い人もいれば、「英文読解」や「英作文」などの文法面に強い人もいます。
巷にある英語スクールには「発音だけ」や「会話だけ」のように「音声面」に大きく比重を置いた指導をするところがたくさんある一方で、中学校や高校などでは「文法面」に大きく比重を置いた指導をしています。
つまり、
「音声学習」をやるなら「音声学習だけ」だったり、
「文法学習」をやるなら「文法学習だけ」だったりするのが、
今の日本の「英語学習」「英語教育」の一般的な姿であるように思われます。
しかし「音声学習」をする際、「発音をよくする」とか「リスニング力を高める」とか、文字通り「音」の部分だけにその利点を見出すのは間違いです。
もちろん、「音読」や「暗唱」には、「音」に関する学習効果は大きく期待できます。
しかし、「音声学習」の利点の本当のポイントは、これまでこのブログで何度も書いてきましたが、「英語の法則を無意識に獲得する」ということなのです。
言語は「法則」のかたまりです。
車で道路を走るのに「ルール」があるのと同じように、
英語で人とコミュニケーションをとるのにも「ルール」が必要です。
車の運転と同じで、英語のルールを守っている者同士であれば、コミュニケーションはスムーズに行きます。
ところが、ルールを守らない者がそこに入ってくると、当然のことながらコミュニケーションの流れは悪くなります。
時には誤解や衝突が生じることもあります。
英語を学習する以上、世界の英語ユーザーが共通して使っている最低限の「ルール」というものを学ぶ必要があります。
そして、英語のルール、つまり「英語の法則」というものは、単に「文法」だけではななく、「音声」の中にも含まれていると考えるべきなのです。
音読や暗唱などの「音声学習」を続けている人は、「音」の中から、自然に「英語の法則」を吸収していきますが、そのこと自体を学習者本人が自覚することはほとんどないでしょう。
一方、「英文法」という形で英語の法則を学習していく場合には、それは「自然」なのではなく、半ば強引に、頭を使って無理矢理学習していくことになります。
ですが、音声学習によって身につけていく英語の法則も、文法学習によって身につけていく英語の法則も、どちらも「同じもの」です。
両者の違いは「自然に感覚的に」なのか「意識的に無理矢理に」なのかという点だけです。
音声学習をせず、単に「文法学習」だけで英語の法則を学ぼうとすることは、それ自体、頭に大きな負担を強いることになります。
なぜなら、文法というものは「理屈」や「理論」であり、さらには「例外」や「場合分け」などのイレギュラー要素も多く含むため、学習者が「頭の良さ」を発揮していかなくてはならないからです。
ところが、英語は「言語」ですから、耳の聞こえる人間であれば、頭が良かろうと悪かろうと誰もが身につけていくことができるはずです。
できるはずなのですが、英文法という「音を使わない学習」だけに偏ってしまうと、「頭の良い人でなくては英語は身に付かない」ということになってしまいます。
そこで、やっぱり「音声学習」が必要になるのですね。
「音声学習」をたっぷりやっている人が「英文法」を学ぼうとすると、「自分の頭の良さ」を使う前に、「感覚的」に英文法の理屈を理解できるようになります。
例えば、冠詞の「a」や「the」をどのように使い分けるべきか、ということを文法書の「理屈」のみで覚えようとすると、とても大変です。
そこには「理屈」だけでなく「例外」もあるからです。
それを全て「頭の良さ」だけで対応しようとしても、限界があります。
実際、ある程度英文法を勉強してきたと自負している人が書いた英文を見てみると、「a」や「the」に関して、とても「不自然」な使い分けをしている場合もあるのです。
そういう「不自然」な使い分けは、もしかしたら、英文法の解説書にはその通りに書かれているのかもしれません。
しかし「文法」というものは、誰かが法則を見つけてまとめたものですから、それ自体が完全なものではありません。
英文法を完全に学習したからと言って、世界の英語ユーザーが共通して理解できるような自然な英文を書けるようになるというわけではないのです。
暗唱や音読などの「音声学習」をたくさんおこなっている人は、「頭の良さ」や「理論・理屈」を使わなくても、文法的なことを感覚的に理解し、使い分けていくことができます。
私の教室でも、ある生徒が1つの文法項目を学習していて、「どうも理解がにぶいな」と思って聞いてみると、「最近は家での音声学習をほとんどやっていません」と答えることがよくあります。
逆に、同じ生徒であっても、まだ習ってもいない文法項目が出てきた時に、不思議と正しく英文を作ったり解釈したりすることができる時もあるのです。
そういう時、生徒は決まって「最近、音声学習をすごく頑張っているんです!」と嬉しそうに話してくれます。
「英語の法則」というものは、「音声学習」と「文法学習」の両方から学んでいくからこそ、バランスよく理解し、身につけていくことができるのです。
「文法が苦手だ」という人ほど、文法学習に偏らないで「音声学習」を合わせて行うと良いでしょう。
「音声学習」と「文法学習」を統合させることで、文法の理解が格段にラクになるのです。
是非お試しあれ!
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