そもそも「考える」という行為は、「何者かに問われる」ということをきっかけにして始まるのが普通です。

「問いかけてくる」のは何者か、と言えば、それは「自分以外の他人」であるかもしれないし、あるいは「環境」や「状況」かもしれません。さらには、「自分自身」が自分に問いかける、ということもあります。

「問いかけてくる」のが何者であろうとも、「考える」ということを普段からたくさん練習する人は、きっと「問われる」という回数が多いのでしょう。

「問われる」ことが多いから、「考え始める」ということも多くなるのです。

 

人に何かを問いかけるような文を「疑問文」と言います。

いきなり英文法の話になってすみませんが、英文法における「疑問文」には、「Yes」か「No」のどちらかで答えることができる「一般疑問文」と、「Yes」か「No」では答えることができない「直接疑問文」があります。

「直接疑問文」は、「誰?」や「いつ?」や「どこへ?」といった「疑問詞」によって作られます。

英語の疑問詞は、以下のように分類されます。

<疑問代名詞>
1. who(誰が)
2. whose(誰の/誰のもの)
3. whom(誰を/誰に)
4. which(どっち/どれ/どちらの/どの)
5. what(何/何の)

<疑問副詞>
1. when(いつ)
2. where(どこで/どこに/どこへ)
3. why(なぜ)
4. how(どうやって/どれくらい/どのような)

このうち、「疑問代名詞」の5つについては、たいてい「答えを1つ得られたらおしまい」となるケースがほとんどです。

「彼はですか?」と尋ね、「彼は私の父です。」という答えを得られたら、それ以上「それは誰ですか?」と尋ねることはできません。

同様に、「あなたの好きな食べ物はですか?」と尋ね、「私は焼き鳥が好きです。」という答えを得られたら、それ以上「それは何ですか?」と尋ねることはできません。

いや、「焼き鳥」が何であるかが分からなければ「それは何ですか?」と尋ねることも可能かもしれませんが、その質問に対し、「焼き鳥とはこういうものです。」という答えを得られたら、それ以上「それは何ですか?」と尋ねることはできないでしょう。

疑問代名詞だけでなく、4つの「疑問副詞」のうち、最初の「when」と「where」の2つも同様に、「答えを1つ得られたらおしまい」となります。

「あなたの誕生日はいつですか?」と尋ね、「私の誕生日は1月1日です。」という答えを得られたら、それ以上「それはいつですか?」と尋ねることはできません。

同様に、「あなたはその本をどこで買ったのですか?」と尋ね、「駅前の本屋で買いました。」という答えを得られたら、それ以上「それはどこですか?」と尋ねることはできません。(あるいは、「その駅はどこですか?」と聞くことは可能かもしれませんが、それも答えを得られたらおしまい、となります。)

「Yes/No」のどちらかの答えを求める一般疑問文も同様に、「答えを1つ得られたらおしまい」となります。

ところが、疑問副詞の「why」と「how」は違います。

「答えを1つ得られた後でも、さらに追いかけて質問をする」ということが可能です。

「数学のテストで点が取れない。」と困っている生徒に対し、「なぜ数学のテストで点が取れないのですか?」尋ね、「あまり勉強しなかったから。」という答えを得られたとします。

そうしたら、今度は「あまり勉強しなかったのはなぜですか?」と尋ねることができます。

その問いかけに対し、「数学が好きではないから。」という答えが返ってきたら、今度は「なぜ好きではないのですか?」と尋ねることができます。

「なぜ(=why)」という言葉は、このように、1つの答えを得たらおしまいになるのではなく、得られた答えに対して、「さらに追い打ちをかけて尋ねる」ということを可能にしてくれる疑問詞なのです。

つまり、「なぜ」という言葉を使って「自分自身に問いかける」ということを普段からやる人は、答えが1つ出たところで「考える」のが終わらず、その次に「新たに考え始める」ということを続けていくことができる、ということです。

「なぜ」という言葉を使い、1つの答えが得られたところで満足せず、次々と「自分自身に問いかける」ということをやる人は、その分だけたくさん「考える」ということを練習することになります。

さらに、「なぜ(=why)」は「原因を突き止める」ために使われる言葉であり、時間的な流れとしては「過去」へと向かっていくような場合に使われる言葉ですが、これに対し、「どうやって(=how)という言葉は、「改善策を探る」ために使われ、「過去」というよりも「未来」へと向かっていく場合に使われる言葉です。

「どうやって(=how)」もまた、1つの答えが得られた後で、さらに追い打ちをかけて「それはどうやって?」と尋ねていくことができる疑問詞です。

「考える」ということを普段からたくさん実践している人は、「why」と「how」の2つの疑問副詞を使って頻繁に「自分自身に問いかける」ということをしている人なのでしょう。

その反対に、「why」や「how」という言葉を使って自分に問いかけるということをあまりしない人は、結果的に「考え始める」という機会をあまり多く持つことができない、と言えそうです。

「賢い人」になりたいのであれば、「なぜ(=why)」や「どうやって(=how)」の2つの疑問副詞を使い、普段から自分自身に問いかけるということをやってみると良いでしょう。

 

<続く>