「伝える力」を高めるためには、とにかく「伝える練習」をすることが不可欠です。

しかし、子供だけでなく、大人であっても、自分の頭の中で考えていることを分かり易く人に伝えるのは簡単なことではありません。

「簡単ではない」ということを分かっているからか、大人が子供に対して「まあ、そこまでキッチリ伝えられなくてもいいよ」といった具合に「中途半端を許容」してしまっているケースが多々あるように思います。

「簡単ではない」とか、「この子には難しいから無理だ」とか、そうした「言い訳」を先に出してしまえば、目の前の子供の「伝える力」を伸ばすことなど到底できません。

例えば、子供が何かを伝えてこようとしたとします。

子供ですから、当然、考えていることをキッチリと伝えられない方が自然かもしれません。

それを聞いている方の大人は、「子供の不完全な伝え方」に対し、「無理もない」と思ったり、あるいは「よく分からない」と思ったり、はたまた「分かりづらくてイライラする」といった感情を持ったりします。

その時、子供の話を遮ってしまい、「君の言いたいのはこういうことか?」という具合に、大人が子供に代わって「説明」をしてしまうことがあります。

あるいは「もう聞きたくない」という感情的な理由から、話を無理矢理中断させてしまうこともあるかもしれません。

ですが、いずれも「子供の伝える力を伸ばす」という目的に向かっているとは言えません。

子供の伝える力を伸ばすならば、「子供に最後まで説明させる」という姿勢が大人側の方に必要です。

つまり、大人の方の「忍耐」や「我慢」というものがなければ、子供の伝える力は伸びない、ということです。

これは特に家庭の親によく見られる傾向かもしれません。

例えば、本校の入会説明会に初めてやってくる親子と話をしていて、私が子供の方に質問したにも関わらず、子供がうまいこと説明できない様子に見かねて、親が代わりに私の質問に答えてしまう、ということはよくあります。

そんな時、私は親の方に向かって「お母さん、本人が答えるまでお待ち頂けますか?」と制したりします。

子供が最後まで言えなかったとしても、最後まで聞く姿勢を大人が持たなくてはなりません。

「伝えるのが下手だ」ということならば、なおさら「伝える練習」が必要です。

「伝えるのが下手だ」からと言って、親が「私が代わりに伝えた方が良い」と考えてしまうと、その子供の「伝えるのが下手」なのはずっと変わりません。

親は、子供が何かを伝えようとした時に、少しは助けても良いですが、基本的には「最後まで全部、子供自身に伝えさせる」ということを日頃から実践すべきです。

またこのことは学校でも同様に必要なことです。

学校では、さらに「伝える練習」を実践するのは難しいかもしれません。

次回、これについて考えてみます。

<つづく>