前回の続き>

前回は「発音練習の際には、どのようなことを意識すれば良いでしょうか?」ということについてざっと「4つ」ご紹介しました。

<発音練習で意識すべきポイント>
1. 自分が出している音を、自分の耳でしっかり「聞こう」とすること。

2. 正しい音はこうだった、と探るよりも、「自分はこうやって間違えてしまいがちだ」ということに注意すること。

3. 丁寧に、ゆっくり発音すること。

4. 細部にこだわり、自分自身のことを緻密にチェックすること。

今回は上記の「2」番目について考えてみたいと思います。

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2. 正しい音はこうだった、と探るよりも、「自分はこうやって
間違えてしまいがちだ」ということに注意すること。
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人が何かを観察する際には、「肯定的な見方」と「否定的な見方」の2通りが考えられます。

しかし、何かを観察しながら、そこに「ミス」を見つけようとするならば、「肯定的な見方」ではなく「否定的な見方」が必要となります。

「ミスがあるのではないか?」と疑った目で観察していくからこそ、ミスが見つかるのです。

私(久末)は以前、出版社に勤めていました。

自分が企画した本の原稿があがってくれば、当然、編集者として自分が「初校」をやらなくてはなりません。

「初校」を読みながら赤ペンで校正を入れていくのです。

入社したての頃は、私は原稿にあまりたくさん赤を入れることができませんでした。

ところが、同じ原稿を先輩が読むと、私が書き込んだ以上に真っ赤に校正が入ります。

この違いは一体なんなのでしょうか?

新人だった私は、「著者はえらい先生ばっかりだ。その先生が書いたものなんだから、間違いがそんなにあるはずはない」という「肯定的」な見方をしながら校正をしていました。

しかし先輩は違いました。

「いくらエライ先生だからといっても、文章のプロではないかもしれない。だから『てにをは』が違うとか、『漢字変換』が間違っているとか、必ず誤りがあるものだ」という「否定的」な見方をしていたのです。

「ミス」や「間違い」を発見できるのは、「否定的な見方」があればこそ、なのです。

このことを「自分の発音練習」に当てはめてみましょう。

「自分が発している音」を自分の耳で聞いたとしても、その音に対して「これで良い」という肯定的な見方が大部分を占めてしまっていれば、当然「間違った発音」に気づくことはできません。

例えば、「next」という単語を発音する際に、最後の「xt」のスペルの部分は、発音記号では[kst]という「無声音」の連続となります。

日本人の中には、「xt」のスペルの部分を、「クスト」というように発音してしまい、「k」の後ろに「u」という母音の音(有声音)を入れてしまう人が少なからずいます。

仮にある生徒が、発音練習の際にこの部分を指摘されたとします。

そして、その指摘された箇所に注意しながら、発音の練習をしたとします。

ところが、発音練習をしながらも、指摘された箇所について、自分が「指摘された箇所を修正できていないまま」で練習を続けてしまうことがあります。

本人は「正しくやっている」つもりであっても、端から見ている人には「間違っている」ということになってしまいます。

どうしてそういうことになってしまうのでしょうか?

それは、練習している本人の中で「kは無声音のままで発音するのが正しい」というように「正しいのはこれ」という見方をしているからです。

「正しい発音をしよう」というのと、
「間違った発音をしないようにしよう」というのとでは、言っている内容は同じかもしれませんが、「意識の方向」がまるで逆です。

「正しい発音をしよう」というのは、いわば「肯定的」な見方と言えます。

一方、「間違った発音をしないようにしよう」というのは「否定的」な見方と言えます。

「正しい発音はこれ、だから正しい発音を目指そう」という肯定的な見方をしていては、実際に間違った時に気づけないことが多々あります。

しかし「間違った発音はこれ、だから間違った発音をしないようにしよう」という否定的な見方をしながら目を光らせていれば、その「間違った発音」をした瞬間に自分で気づくことができます。

一見、「同じことでは?」と思えてしまうかもしれませんが、これは大きな違いです。

要するに、「自分のことを肯定的に見過ぎている」という人は、自分が犯した間違いに気づきにくい、ということなのです。

うちの生徒の中にも、「自分のことを肯定的に見すぎている」「自分の発音に対して、かなり早い段階でオーケーを出している」という人は、たいてい発音が上達していきません。

逆に、「自分のことを信用せず、どこか疑いながら見ている」ような人は、発音が上達していくものです。

前々回もご紹介しましたが、これは「量をこなせば良い」という話ではありません。

自分が間違った発音をしていることに気づかないままたくさん練習してしまうと、その「間違った発音」の方が身についてしまうのです。

そうすると、練習すればするほど下手になる、という最悪のループに陥ってしまうのです。これは絶対に避けなくてはなりません。

「正しいのはこれ」「間違っているのはこれ」という線引きをするのは結構なことですが、自分が実際に練習している時には「正しいのをやろう」ではなく「間違っているのをやらないようにしよう」という意識が大切なのです。

ぜひ、意識してみてください!

続く

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