「賢さ」というものをどうやって身につけたら良いか、と考える前に、そもそも「賢さ」というものは「誰にでも身につくものなのか?」ということを考えてみたいと思います。

先に答えを言わせてもらうと、その答えは「YES」です。

「賢さ」というものは、健康な頭があれば、誰でも身につけていくことが可能です。

そして、それは「生まれ持った能力」としてある程度備わっている人もいるかもしれませんが、必ずしも先天的な要素が絶対的に人の賢さを決める、ということではないはずです。

その根拠となるのが「脳の仕組み」です。

 

「脳の仕組み」というものについて、多くの人はあまり馴染みがないかもしれませんね。

しかし、「脳の仕組み」の中でも、基本的な部分については、私はもっと一般的に広く知られても良いのではないかと思っています。

「脳の仕組み」を知ることは、「賢さを身につけていくこと」に必ずつながります。

逆に言えば、「脳の仕組み」を全く知らないままでは、どうやって賢さを身につけていけば良いか、その手がかりすらつかめません。

親や教師は、少しくらいは「脳の仕組み」について知る努力をすべきです。

さて、「脳の仕組み」について簡単に表現するならば、「脳」は「神経細胞」というものがつながって出来ている、というイメージとなります。(神経細胞は「ニューロン」とも呼ばれます。)

「神経細胞」の数は、たいてい「遺伝」によって決まるようですが、頭の善し悪しは「神経細胞の数」で決まるわけではありません。

1つの神経細胞には、それぞれ「軸索(じくさく)」と呼ばれる突起が1本ずつ生えています。

軸索は「電流を流す」という、「出力」の働きをする突起です。

さらに、神経細胞には、軸索とは別に、「電流を受け取る」という「入力」の働きをする「樹状突起」というものも生えています。

樹状突起は1本ではなく、1つの神経細胞から複数本、生えています。

以下、「Wikipedia」の「神経細胞」の項目に載っていた図です。

電流の「出力」となる軸索は、1つの神経細胞から1本しか生えていませんが、それがいくつにも分岐し、他の神経細胞の樹状突起や細胞体に接続します。

この接続のポイントのことを「シナプス」と呼びます。

一般に「頭が良い人」は、神経細胞の数ではなく、「シナプス」の数が多いとされています。
(最近の研究では、神経細胞ではなく、神経細胞を取り巻く「グリア細胞」が頭の良さに関係がある、という見解もあるようです。)

そして、ここからが重要なのですが、「神経細胞」というものは、生まれる前の胎児の時点で「最大数」まで分裂した後、そこから先は、数が増えることはない、というのが一般的に言われています。(一部、生まれた後でも分裂する神経細胞も発見されているようですが、それは多くはないとのことです。)

神経細胞の数は、生まれた後に劇的に増えることはありませんが、それらの間の「接続ポイント」となっている「シナプス」に関しては、生まれた後にどんどん増えていきます。

これは、若い頃はもちろんのこと、高齢者であっても例外ではありません。

つまり、何歳になっても、神経細胞から生えている軸索が「新しく分岐」し始め、新たな「シナプス」を作り出す、ということが可能なのです。

そして、「シナプス」を増やすためには、「頭を使う」ということをしなくてはなりません。

頭を使い続けていくうちに、軸索が新しく分岐し、新しくシナプス結合のポイントを作り出していくのです。

「自分は頭が悪い」とか、「自分の子供は頭が悪い」とか、そんな風に「諦め」の気持ちを持っている人も、諦めるのはまだ早い!

「頭を使う」ということを日常的にせっせとやっている人は、その分だけどんどん「シナプス」の数が増えていき、結果的に「賢くなる」ということにつながります。

一方、「頭を使う」ということを日常であまりしていない人は、新たに作られるシナプスの数も少なく、結果的に「賢くないまま」となってしまうのです。

まず、親であろうと、教師であろうと、自分の子供や生徒に対して「教育」という形で働きかけようとするならば、自分自身が率先して「自分の頭を良くする」ということを実践すべきと思います。

「頭を使えば、頭は良くなる」ということは、「脳の仕組み」を解明しようとしている多くの研究者たちによって示されている事実です。

そのことを踏まえながら、親や教師が、「日常生活」における自分自身の頭の使い方を見直すところから「本当の教育」は始まるのかもしれません。

 

<続く>