<前回の続き>

前回解説した通り、第4文型の文は、第3文型の文へと変換することができます。

 ・I bought him a book. <第4文型>
 ・I bought a book *for him*. <第3文型>

どちらも、日本語で表現すれば「私は彼に本を買った。」となります。

ほぼ、同じ意味として解釈して構いません。

ところが、厳密には、第4文型と第3文型では、少し、意味合いが違っています。

上の例で言えば、「第4文型」の方では、2つある目的語のうち、「him」よりも、後ろに置かれた「a book」の方が、相手に伝えたい情報として重要度が高い、ということになります。

つまりは、「誰に?」という情報よりも、「何を?」という情報の方を優先的に伝えたい、という意識がどこかにあるということです。

一方、「第3文型」の方では、「a book」と「for him」で比べると、「for him」の方が、相手に伝えたい情報として重要度が高いということになります。

つまりは、「何を?」という情報よりも、「誰のために?」という情報の方を優先的に相手に伝えたい、という意識があるのです。

どちらの文型の場合でも、「2つの目的語」が並んだときに、「より後ろ」に置かれた方が、相手に伝えたい情報として重要になります。

このことは、実はこの話に限らず、英語という言語において割と共通したパターンと言えます。

入れ替えが可能な2つの言葉(今回の場合は2つの目的語)について、「より後ろ」に置かれた方は、時間的に「後に」相手の耳に届きます。

そのことにより、文が終わった後で、後ろに置かれた言葉の方が「耳に残りやすい」ということが言えます。

このため英語では、入れ替えが可能な2つの言葉については、なるべく強調したい方を「より後ろ」に置くという傾向が見られるのです。

たいていは、「古い情報」よりも「新しい情報」の方が強調されますし、また「代名詞」よりは「名詞」の方が強調されます。

特に、「直接目的語(何を?に当たる語)」が「古い情報」であり、かつ「代名詞」で表現される場合には、「直接目的語」の方を先に置く形、つまりは「第3文型」の形で表現されるのが一般的となります。

上の例では、直接目的語は「a book」という名詞でした。

これを「it」という代名詞に置き換えたとします。

「it」というのは、既に会話や文脈において前に出てきた名詞の「代わり」に使われていますから、これ自体が「古い情報」ということになります。

従って、「a book」を「it」に置き換える場合は、「I bought him it.」という第4文型の文にはせず、「I bought it for him.」という第3文型で表現するのが自然ということになるのです。

以上のように、「第4文型」の文というものを扱う際には、少し注意が必要です。

「第4文型」の文を「第3文型」の文に置き換えても「日本語では同じ訳になる」からと言って、どちらも完全に同等に扱って良いというわけではないのです。

そういう観点で、日頃から英文に触れてみると、なるほど、違いが見えてきて楽しいものなんです。

<おしまい>