まず、おさらいですが、日本語の文を英語に訳そうとする際、「関係代名詞」が使われると思われる場合には、以下の手順を確認すると良いでしょう。

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1. その日本語の文において、「主語+述語動詞」を含んだかたまり(形容詞節)が「名詞」を修飾していることを確認する。(ただし、「主語」が含まれず、「述語動詞だけ」で「名詞」を修飾していることもある。)

例: 私は彼のお父さんが作った家が好きだ。→「彼のお父さんが作った」の部分が「家」という名詞を修飾している。

2. 「形容詞節」の部分のみを英語にしてみる。

例: 「彼のお父さんが作った」→「his father made」

3. 「形容詞節を除いた部分」を英語にしてみる。

例: 「私は家が好きだ」→「I like house」または「I like houses」

4. 「3」の中にある、「形容詞節に修飾される名詞(先行詞)」がどれであるかを確認する。

例: 「I like house.」または「I like houses.」の「house/houses」が先行詞である。

5. 「2」で作られた英語表現を、「3」で作られた英文の中の「先行詞」の「後ろ」に置き、ピリオド等で終えて文の形にする。

例: 「I like house his father made.」または「I like houses his father made.」

6. 「関係代名詞」を選ぶために、「先行詞」を「人称代名詞」に置き換えてみて、それを「形容詞節」の中に入れ込み「独立した1つの文」を作る、ということを 頭の中で想定してみる。その際の人称代名詞が、「主格」「所有格」「目的格」「独立所有格」のどれになっているかを確認する。

例: 先行詞「house(またはhouses)」を人称代名詞に置き換えると「it」か「they」となるが、これを頭の中で形容詞節「his father made」の中に入れて独立した文にしてみると、「His father made it.」または「His father made them.」となる。この場合、人称代名詞は「it」または「them」なので「目的格」となっている。

7. 先行詞が「人」または「モノ」のどちらを表す言葉であるかを確認する。

例: 先行詞「house(またはhouses)」は「モノ」を表す言葉である。

8. 「6」と「7」が確認できたら、以下の関係代名詞の一覧表から関係代名詞を1つ選び、「5」で作られた英文の中で、「先行詞」と「形容詞節」の間に「関係代名詞」を入れる。

関係節内での働き=「主格」 関係節内での働き=「所有格」「独立所有格」 関係節内での働き=「目的格」
先行詞=「人」 who whose whom
先行詞=「人以外」 which (whose)
(of which)
which
先行詞=「人・モノの区別なし、あるいは文脈上特定されている語」 that that

例: ここでは関係代名詞は「which」か「that」となるので、「I like house that his father made.」あるいは「I like houses his father made.」となる。

9. 「6」の手順の際、「先行詞」を「人称代名詞」に置き換え、それを「形容詞節」の中に入れ込み「独立した1つの文」を作る、ということを想定した際に、その人称代名詞が、「動詞の目的語」として機能している場合には、関係代名詞そのものは「省略」されることが多い。

例: 今回の例では「it」や「them」は「動詞madeの目的語」となっているので、関係代名詞「which」や「that」は省略しても良い。

10. 「形容詞節によって修飾される名詞」について考えた時、会話や文脈上、それが「特定されている名詞」として解釈されるならば、その名詞の前に「the」を つける。「特定されていない名詞」として解釈されるならば、「可算名詞の単数形」の場合には「a(またはan)」をつける。あるいは、「特定されていない 名詞」として解釈され、その名詞が「可算名詞の複数形」や「不可算名詞」の場合には、その名詞の前には何もつけないか、あるいは、「漠然と、全体の一部」 であることを示したい場合にはその名詞の前に「some」をつける。

例: 今回の例では「彼のお父さんが作った家」なので、「世界中の全ての家」の中から「彼のお父さんが作った家」に範囲が制限されることとなるため、「特定されている名詞」と解釈し、「the」をつけるのが良い。→ 「I like the house (which/that) his father made.」または「I like the houses (which/that) his father made.」

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さて、ここまでのおさらいが出来たところで、今日の本題に入りましょう。

以下の日本語の文を見てください。

例: これはあなたが探している本ですか?

まず、手順1について考えてみると、この文では「あなたが探している」という部分が「形容詞節」となり、「本」という名詞を修飾している、と解釈することができます。

これにより、手順2と3を考えてみると、形容詞節の部分が「you are looking for」となり、形容詞節を除いた部分が「Is this book?」となります。

次に手順4と5をやってみると、「Is this book you are looking for?」となります。

次に、手順6のみを考えてみます。手順6では「先行詞」を「人称代名詞」に置き換えてみて、それを「形容詞節」の中に入れ込み「独立した1つの文」を作る、ということを 頭の中で想定してみるのですが、実際にやってみると先行詞は「it」となり、これを形容詞節に入れ込むと「You are looking for it.」のような文が出来上がります。ここで、「it」は「for」という「前置詞の目的語」となっていることが分かります。

前置詞の目的語というのは、「前置詞の後ろに置かれ、句の一部となる言葉」のことです。「in Japan」ならば「Japan」という名詞が、前置詞「in」の目的語ということになります。

先行詞となる言葉が形容詞節の中で「前置詞の目的語」として機能するような場合も、「動詞の目的語」の場合と同じように「目的格」の関係代名詞が選ばれるのですが、これまた動詞の目的語と同様に「省略されるのが普通」ということになります。

先行詞は「モノ」なので、ここで敢えて関係代名詞を選ぶならば、「モノ」の「目的格」で「which」か「that」ということになります。

そうすると、手順6〜9を一気にやると、Is this book (that/which) you are looking for?」となります。。

次 に手順10について考えてみると、 「あなたが探している本」というものはたくさんあるわけではなく、「1つに特定される」と考えられるので、「特定されている名詞」ということになり、「可算名詞の単数形」である「book」の前に「the」をつけることになりま す。

これをまとめると、以下のようになるわけです。

例: これはあなたが探している本ですか?
→ Is this the book (that/which) you are looking for?

文の最後が「for」で終わっているという点が気になるという人もいるかもしれませんが、ここでは「for」で終わって良いわけです。

しかし、先行詞が形容詞節の中で「前置詞の目的語」になっている場合に、必ずしも前置詞が形容詞節の一番最後に置かれると決まっているわけではありません。

次回は、前置詞を伴うような関係代名詞の表現の別の例をご紹介します。
どうぞお楽しみに!